[Review]: 博士の愛した数式

博士の愛した数式 (新潮文庫)

『博士の愛した数式 (新潮文庫)』 小川 洋子

常に目的をもってアンテナをはっていると、良書に出会えるのが素晴らしいんやね。先週の土曜日、前から気になっていた本を探しに行くと、目に飛び込んできた「本」。手に取って版をみると、ナ、ナント31版。すごい、久しぶりにそれだけ版された本を見た。

ご存知の方には申し訳ないけど、ちょっと解説。この著者、この本以外はかなり女性の暗部(といっていいのかワカランけど)を描写した物語を書かれているみたい。芥川賞受賞作「妊娠カレンダー」もあらすじを読んでいると、ゾクゾクっと背筋が寒かった。でも「博士の愛した数式」は、全然違う。

詳細は、リンク先にまかせるとして、内容そのものの感想より視点を変えたノウガキを少し。

とにかく驚いたのは、文章の自然体。今まで読んできたどの本よりも心地よかった。優しかった。耳元で語りかけてくれるように言葉が次々と目に映る。だからシーンのすべてが頭で描写できる。

この自然体、どうすれば書けるのだろう?実体験なのだろうか?博士の一つの一つの行動が、あまりにも具体的なので常にその疑問を感じた。博士以外の2人の行動もいい。2人の言動が違和感なく受け入れられる。

自分も同じ立場ならそうするかもしれないと感じるシーンが多々あるからかもしれない。本当に日常生活に育まれる「発見と成長」がそこにある。喜怒哀楽がなんの外連見のない文章で表現されている。

突然やけど、森山未来くんのドラマ・映画を見ていて感動するのも、「自然体」。まったく演じていないようにみえる。まるですべて過去に経験したかのように要求される様々な場面を「言葉」と「表情」で創造していく。

森山未来くんの演技と同じようにこの本は、「言葉」だけで自然体を表現し、見えない「表情」を私に想像させてくれる。3人の喜んだ、困った、泣いた、怒った、黙ったすべての表情を思い描かせてくれる。

これだけ心地よく、片意地張らず、素直で、時には甘え、不快な感情もだせる。そして嫉妬もできる。でもすべて「わがまま」でない自然体。そんな状態になれる大切な人と出会えたら何もいうことないんやろうね。まさしくココロオドル毎日。

ちなみにモデルは、読んでピンときたけど、ポール・エルデシュでしょ!?