泣きたい時に泣ける幸せ

「ガマンしなや、泣きたい時にオレの前では泣いたらエエ」
芯の強いあなたに投げかけた言葉。男ぶったありふれた稚拙な言葉。
そんなあなたが初めて私の前で泣いた時、なぜか幸せに感じた自分がいた。

私をジッと見つめながら、大きな瞳からこぼれ落ちるひとすじの涙。
初めて泣いた日から、あなたはもう私の前で泣くことをガマンしなくなった。

人目をはばからず泣いているあなたを見ながら、時には
いとおしく思い、すまないと思い、しあわせに思い、うとましく思い、うらやましく思い
二人で無言の会話を交わした。

「泣きたい時に思い切り泣ける人がいる幸せ」
とあなたが私に言った言葉。今になってやっとわかる気がする。