沈黙の社会保険料2

沈黙の社会保険料に続く第二弾:->ちょっと前の記事。

社会保険庁は、年金保険料の負担(労使折半)を逃れるために企業が「休業する」などと偽って厚生年金を違法に抜ける「偽装脱退」をなくすため、全国調査に乗り出す。各都道府県の社会保険事務局に対し、今年に入って受理した脱退届約4万件を調べ直すよう24日に指示する。不況で偽装脱退が増えているとみられることから、同庁は昨年11月に審査を厳しくしたが、東京都の新宿社会保険事務所が脱退届に添付する取締役会議事録のひな型を作って企業に渡していたことがわかり、防止対策が形骸(けいがい)化している可能性があるとして総点検に踏み切る。

via: asahi.com : マネー

新宿社会保険事務所が脱退に便宜を図っているとのチンコロで発覚したらしい。これもずっと昔からあった話。社会保険に加入していない零細企業なんてザラ。

問題は「なぜ偽装脱退しなければならなかったのか?」です。

半数は「払いたくない」が本音だと思う。なかには儲かっている企業もあるはずで。つらいのは、「社会保険料を払うだけの資金がない零細企業、払うと倒産する零細企業」の実態。従業員のために払いたいけど払えない。

部外者は「なんで払われへんねん、従業員負担分もあるやろう?」とか「払われへんのになんで法人にするねん?」という厳しい批判をあびせる。でもね、中小零細企業で家族経営に近い場合、役員報酬なんかを多めに設定してる。財務体力にあってない。リスク回避と税金対策。だから自然と厚生年金と社会保険料が跳ね上がる。

だったら報酬を減額すれば、となるけど、なかなか一筋縄ではいかない。理由を角煮は焼酎ロック6,7杯は必要かな。

会社を設立するとき、税金対策上、個人と法人のどちらが有利かをシュミレーションする。たいてい士業の方々が算出。ただそれはあくまで税金対策の視点であって、経営全般の事情はあまり考慮にカウントされない。「金がいくら残った感じがするか?」の点もカウントされない可能性が高い。

今はマスコミがとにかく社会保険庁を叩けば記事になる。だから昔からある話をほじくりかえされるわけで。おまけにどこかのTVで、「社会保険事務所が偽装脱退をすすめているのは、自分たちの収納率アップ(つまり全体の分母がちいさくなる)につながるからやっている」なんて、現場を知らない学者か評論家がのたまわっていた。

経営者は逼迫した財務状況だから少しでもなんとかしたい思いで社会保険事務所へ何度も足を運ぶ。切実。そこで、事情を鑑みてやむにやまれぬ思いで「偽装脱退」を引き受ける(当然法律違反は承知している)現場のわずかないたわり。ほんの少しのあうん。

そんな「いたわり」が今回の調査でも目をつぶられ、「儲かっている企業の偽装脱退」だけが暴かれることを切に望むなぁ。

『社会保険料 節減の裏ワザ!』 関 昇