diary

stainless

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「今日はバイトしてるよ」
「わかった。じゃ、帰りに寄るね」
「了解。待ってるよ」

電話でそんなやりとりを交わした後、夜、彼女はバイト先
の鉄工所にやってきた。

そして、今日あったことや学校のことなど、他愛もないこ
とを話していた。すると突然、彼女が近くに転がっていた
パイプを手に取り、聞いてきた。

「コレで、リングとか作れる?」
「作れるよ。ココにある機械を使えばね。器用じゃな
いから、そんなたいした物作れないけど」

俺は、彼女が持っていたパイプに手を伸ばした。

「あっ、待って。どうせならいろいろと合わさなきゃね」
「何一人でしゃべってんだ?はやくしな」
「待って、えーっと、じゃあコレでお願い」

彼女は、周囲を見回して、さっきのより細くて、
材質の違うパイプを俺に差し出した。

「コレ、ステンレスだからあまり綺麗にならないよ」
「ううん、ソレでいいの」
「わかったよ。少し待ってな、そこらへんで」
「うん」

しばらくして、ボンヤリと外を眺めていた彼女の目の前に
ステンレスのパイプを加工したリングを差し出した。
少しだけ輝いたリングを見た彼女が、驚いて目を丸くした。

「エッ、こんなふうになるんだ、あのパイプが・・・・・」
「ナニ驚いてんだ、もっと光らせようか?」
「ううん、いい。これで十分」

驚く彼女を不思議に思いながら、俺は残っていた作業を続
けるため機械の方へ向かった。しばらくすると、背後から
彼女のか細い声が聞こえてきた。

「コレ…..もらってもいい?」
「ハァ、そんなのどうするんだぁ?気に入ったんなら、もっ
と作ってやろうか?」

笑い飛ばしながら振り返って、彼女のしぐさを見た。
今度は俺が驚く番だった。

ステンレスのリングを左の薬指にはめた彼女は、その左手
を自分の目の前にかざして愛おしそうに見つめていた。そ
して、今まで見たことのない笑顔で言った。

「こーゆうのは、ひとつでいいんだよ。ホラ、ちゃんと入
るべき指にはいって、あつらえたみたいでしょ?」

彼女のその笑顔を見て、俺はヘンに慌てた。

「チョ、チョット待て!そーゆうことは、俺はちゃんとす
るから!いくら何でもステンレスのリングはないだろ!!」

俺の言葉を意に介さずって感じで言った彼女の言葉が、
生涯忘れらないものになった。

「目の前で作ってくれたステンレスのリングだからいいの。
ステンレス(stainless)。だって、”さびない””よごれない
“って意味でしょ。そんなふたり、最高だよね」

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