[Review]: マグノリア

『マグノリア [DVD]』 ポール・トーマス・アンダーソン

映像・脚本・音楽・配役、どれをとってもシビレル賛否両論かもしれない映画。久しぶりに「映画」を堪能した気分。ただ長いよ、長い。しかも「映画」なだけあって集中しないといけないぶんキツイ。「踊る」なんかと違って気をぬいても、話もわかるし先もわかる平気な「映画みたい」なわけにはいかん。

稚拙な感想でまとめると、魅了・震撼・狂気・絶句・驚喜・愛惜・驚愕・熟考かと。いや、違うか。

L.A.郊外。ある24時間の人生模様をスラングまじりのフィロソフィな口調で綴った群像劇。登場する人物は10数人の男女。みんな何かが破綻している。それぞれがまったく違う24時間の人生を送っているのに、意外なつながりをみせはじめる。そして衝撃のラストシーン。ラストシーンを知って見ると、推理小説の犯人がわかって読むよりもショック。

「偶然?か必然か?」をテーマに「人生であり得ること」を問いかける。「これもあり得ることなんだ」という言葉が象徴するように、「映画だからあり得たのか」あるいは「現実でもあり得るのか」のはざまを漂流させるかのよう。

シーンからシーンをつなぐ卓越した映像。見逃してはならない一つ一つの台詞と強烈なスラングのセリフ。映像の空気に見事にとけ込んでいる動と静の音楽。登場人物がいつのまにか口ずさむ心の琴線にふれたエイミー・マンの挿入歌。

対して「まったくくだらねえ」と徹底的に非難され否定される「映画」。

だれもがいえる「ヨカッタヨ」を拒む妥協のない「映画」。

不潔にまみれた気品あふれる「映画」。