民営化ブラザー

先日の米国大統領の就任演説につづいて、第162回国会における小泉内閣総理大臣施政方針演説を読んでいてフト思った。

「似たもの同士、民営化ブラザー」

さらに似たような動機が垣間見られるのが香ばしい。

兄貴分!?は、「今改革しなければ、年金制度は崩壊する」と訴えている。以下、2005年1月22日の東京朝刊を引用

米国の年金は、現役世代の個人と企業が社会保障税を国に支払い、これを財源に国が高齢者に年金を支給する。しかし、米政府によると、年金を支えてきたベビーブーマー世代が引退する08年ごろから年金財政は次第に悪化し、42年には支給額が現在(夫婦で月約1100ドル=約11万円)の約7割に減るという。
増税を否定するブッシュ政権の構想は「年金の民営化」。社会保障税の一部を振り向ける「個人勘定」を創設し、株や投資信託で自由に運用する。「将来の年金は自分で積み立てる」仕組みを導入するものだ。

弟分!?は、「『官から民へ』『国から地方へ』の改革は経済の再生や簡素で効率的な政府の実現につながると確信」し、「改革の本丸」と位置づけて、何がなんでも第162会通常国会で、郵政民営化関連の法案を通過させようとしている。

この”民営化ブラザー”に共通する動機と環境は何か?

もうみなさんご承知の「野心」。いわずもがなですな。

兄貴は9.11とイラク戦争で名を残すことになるが、後世の評価としてはさぞや惨憺たる可能性がある。で、思いついたのが、共和党保守右派の積年の隠れた野望である「年金の民営化」。現行年金制度は、1935年にルーズベルト元大統領が確立した民主党の伝統的政策。これをひっくりかえせれば、「歴史に名を残す」ことになる。

弟分も「日朝平壌宣言」後、一気に「日朝国交正常化」をねらったのかもしれないが、それも自分の任期内では達成が不安、または困難。他にネタを探すとなると、「国連常任理事国」入り。これも難しい。で、目をつけたのが「郵政民営化」。

ってな感じで穿った見方をすると、政治にも興味がわくが、民営化される当事者はたまったもんじゃないでしょうな。

で、もう一つ思う。「民営化のカラクリを上手く説明できる人」がいない。

米国では、民主党リベラル派のE・ケネディ上院議員あたりが、「年金の民営化」に対する『警告』を発している。共和党保守右派が大型減税をちらつかせて、国民全体の目をそむけつつ密かに実行しようとしている野望のカラクリをシャウトしてる。

一方、日本では、郵政民営化を「報じられる」ことはあっても「カラクリ」を説明してくれる人はいない。ましてや、自分は関心がある「財政投融資」の行方なんて「声」さえ聞けん。

米国でも日本でも、「民営化」について大なり小なり叫んでいるが、「上手に説明」できる人が少ない。まぁ、この問題に限らずでしょうがね。

米国は一足飛びに、ともすれば「小さな政府」を実現しようと2期目をスタートさせた。個人の自助努力を重視する「オーナーシップ(所有者の)社会」。ウラを返せば、富と貧困の格差がますます拡大する社会。

さて、日本の優秀な官僚が、米国モデルをトレースするか、独自モデルを構築するかを高見の見物とさせていただいところ。だけど、それどころでない今の自分。ケツに火がついているし。

まぁ、貧富の格差が拡大することは、私見として多かれ少なかれ「流れ」だろうと納得。ただ、問題は自分が、”どちら側”にいて、”どのような”ライフプランを設計し実現できるだけの鍛錬をするかだけ。ただ、それだけ。あとは、「大きな政府」の余計な邪魔が入らぬことを祈るのみ。