ありのままの事実を伝える

会計事務所に勤務していた頃、ある歯科の先生からコミュニケーションとコンサルテーションの相談をうけました。

「初診もしくはそれに近い状態で、患者の口腔内を診査したときに前医の処置に疑問を感じる。その時にどう伝えたらいいのか?」

私は歯科治療の内容や水準を存じ上げているわけではありませんので、ここでは表現をやわらかくしています。ですので歯科の先生方が読まれるとしたら、「疑問を感じる」というよりも「言葉を失う」というニュアンスが近いかもしれません。

その時の私は「なぜ先生はこの質問を私にされるのか?」と考えながら、以下の3つのカテゴリーについて、いくつか質問させていただきました。

  1. 患者様への心情を配慮されるからとまどわれているのか?
  2. 前医の治療よりも最善の治療を提供できるからとまどってしまうのか?
  3. 前医に配慮しているのか?もしそうだとするならなぜ配慮しているのか?

その結果、院長先生が懸念されていることは、

「患者を目の前にして前医の治療を批判すると患者に失礼ではないかと思う。それに前医を否定することは歯科治療を批判しているようで何か引っかかりが残ってしまう。」

に集約されました。

そこで私は、「肯定・否定ではなく、ありのままの事実を伝えてみてはどうでしょうか?」とだけ述べさせていただきました。

患者様にとって過去の治療が芳しくなかったことを知るのは、確かにつらいことです。と同時に、悔やみつつもこれからよくしたいという人には、"どうすればいいのか"を判断するための材料が必要になるとも言えます。

非常におこがましい話ですが、治療を信頼して一任する一方で、「治療を選択するのは患者自身」ではないかと思います。だからこそ、「判断と選択」には、「プロの客観的診断と改善方法の提示」がもっとも必要になるのではないでしょうか?

ウェブサイトのページ制作も同じコトが言えます。付加要素があるとすれば、「話し言葉」を「書き言葉」に置換するライティングの技術です。ここでは割愛しますが、それを除けば、「ありのままの事実を伝える」ことが大切です。

例えば、症例を紹介しているページでも

  1. 何が問題なのか?
  2. 治療方法は複数あるのか?
  3. 患者様が選択した理由は?
  4. どのような治療方法か?
  5. 治療に要した時間や労力はいかほどか?
  6. 経過状況は?
  7. 患者様のメインテナンスの状況は?

などを伝えます。これらの要素で構成された文章があって、はじめて「ライフスタイルの変化」や「QOLの向上」の主観的感想が活きてきます。

ただし、『いくら説明しても「聞いていない」の一言で片づけてしまわれる』と言われるぐらい、先生方と患者様のコミュニケーションは難しいと見聞します。ウェブサイトでも「そんなに伝えても誰もそこまで見ないし、見たからといって質問もない」と言われます。

それでも自分の口腔内に対して関心が高い人は、「この医院にしよう」と選び、その後訪問してから、「あのサイトに書いてあったことですが・・・」と質問されるようです。

一口に「ありのまま伝える」と言っても難しいかもしれませんが、もう一度今のウェブサイトをご覧になって、この視点で担当者の方と再検討されてみてはいかがでしょうか?