[Review]: 常識「日本の論点」

『常識「日本の論点」 (文春新書)』 文藝春秋

日本の論点 2005の姉妹編、基礎編。ちなみに日本の論点2005は、分厚すぎて一気に読了する頭脳をもちあわせてないから、睡眠薬代わり….orz。インターネット版は、日本の論点PLUS

4つの章立てのなかに38の論点で構成されている。

  • 第1章-国のあり方をめぐる論争
  • 第2章-日本社会の制度をめぐる論争
  • 第3章-生き方をめぐる論争
  • 第4章-生命と環境をめぐる論争

38の論点は、1つにつき3-4頁、多くて6頁程度。例えば、第1章の論点のいくつかピックアップすると、

  • 資本主義は絶対の原理なのか
  • 日本の領土はどこまでか
  • 自衛隊は軍隊なのか
  • 核武装はどこが悪いのか
  • 日本人はどこから来たのか

など。内容は、過去から現在にいたる経緯や現状の解説。特定のスタンスに終始するんじゃなくて、是々非々についての幅広い視点を紹介。たまに、書き手の主義が散見できるのがほどよい。ゆえに、少し尻切れトンボで各論点が終わる、なんて言ったら失礼。問題に関連した年表の添付もあり、かゆいところに手がとどいた。

個人的には、第1章と第2章が参考になったり、目からウロコだったり、そんな背景があったのって唸ったり、忙しかった。さらに探求してみたい論点もみつかったし。それぞれ、「Yes or No or Another」を自問自答しながら、根拠を示していくと、頭の体操になるかも。

むかし、「論点という発想は、日本人には、馴染みにくい」というくだりを読んだ記憶がある。なるほど。「テーマ」と「論点」を混同しがちだからそうだ。例えば、”ブランド”をテーマにすると、ブランドとは何かをそのまま考えてしままいがち。が、「エルメスのケリーバッグを3年待っても欲しい理由」という”論点”を設定すると、アプローチしやすい。

また脱線した。そんな感じで、今回の本は「日本」をテーマに38の論点を設定してくれている。ありがたい。

極端に単純化すると、38の論点について是非と折衷だけでも38×3の言説に体当たりできる。だから、小論文の勉強をしている学生や社会人のかたには、オススメかも。
「問題提起」「意見提示」「展開」「結論」の訓練にうってつけだし、その過程で、判断を形成するために必要な材料(=知識)もおぼろげながらわかってくるんじゃないかな。

ここから先は、主観的な愚考になるので、レビューとちがってトークでふれてみよう。

最後におまけ。「論点20:消費税中心か所得税中心か」について。個人的には、消費税中心をのぞむ。逆進性の問題は残るけど、税率は15%前後程度。ただし、簡易課税制度の廃止、インボイスの徹底、消費税滞納の徴収強化、あとはできれば免税事業者の廃止を条件に。反対に、所得税は各種控除を見直して簡素化、税率と課税最低限度額を下げる、かな。