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[Review]: ネオコンの論理

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『ネオコンの論理』 ロバート・ケーガン

原題は「OF PARADISE AND POWER」、邦題は「ネオコンの論理」。ネオコンという言葉は、文中、一切登場しない。著者のロバート・ケーガンは、PNAC(=PROJETCT FOR THE NEW AMERICAN CENTURY: アメリカ新世紀プロジェクト)の思想的支柱だといわれている。

PNACは、設立してまだ5年のシンク・タンク。にもかかわらず、現政権の外交政策を先導している。発足にあたったメンバーがミソ。チェイニー、ラムズフェルド、ウルフォウィッツ、ボルトンなど、いわゆるネオコン(=Neoconservative: 新保守主義)とよばれる政治家の面々。そこから、「ネオコンの論理」と題されたのではないかと。

結論からいえば、「アメリカとヨーロッパは、もはや全く違う世界観をもっている」。だから、「ヨーロッパはアメリカの戦略的パートナーたりえない」と。

  • はじめに
  • 第一章 軍事力の格差
  • 第二章 強さの心理と弱さの心理
  • 第三章 超大国
  • 第四章 ポストモダン
  • 第五章 アメリカが作った世界
  • 第六章 「欧米」はいまでもあるのか
  • 第七章 覇権への適応
  • 解説

まず、結論を導くにあたっての論理の出発点が、「強いアメリカと弱いヨーロッパ」。何が強くて何が弱いのか。ケーガンは、ただ一点のみに焦点をあてる。すなわち”軍事力”。経済でもない、文化でもない、軍事力。

「強いアメリカ弱いヨーロッパ」の論理をもとに、中東や東アジアの危機・紛争問題を処理する国際連合や国際法について、アメリカとヨーロッパの見解の相違を説いていく。

ヨーロッパは軍事力への関心を失い、力よりも法律と規則、交渉と協力の世界へ移行しつつある。そのよりどころが、国際連合と国際法。一方、アメリカは違う。安全を保障する自由秩序の維持・拡大には、軍事力の維持・行使が不可欠だと。

冷戦時代、ソ連と国際共産主義に対抗するために、NATOを軍事的戦略パートーナーに選んだ。NATOがアメリカにとっての「欧米」であったが、今は「欧米」といえない。なぜなら、NATOにかわる軍事力をヨーロッパが模索しているから。

NATOにかわる軍事力とは、言いかえれば、「EU」による軍事力。すなわち、ヨーロッパは、もはや「EU」に関心があり、「統合」が最大の課題になっている。ドイツを過去に戻らせずに統合するにはどうすればよいのか?イギリスは?東欧諸国は?

結果、欧州統合に奔走するヨーロッパは、もはやアメリカと団結するのではなく、「ヨーロッパ」という極になり、アメリカに対抗する勢力になっている。なにより重視する国際機関は、欧州連合(EU)と国際連合。

それでも、この動きは、ヨーロッパ人からすれば合理的であり、アメリカにとっても平和維持と軍事力以外の利益をもたらすことになると理解している。それにヨーロッパがアメリカに挑戦しようと考えていないのも承知している。だからこそ、ヨーロッパがアメリカとの共同歩調から独立独歩を選んだとしても、何が意外だろうか。

アマゾンのカスタマーレビューを読むとわかるように、評価は二分されると思う。納得(賛成を含む)か反対か。反対する人は、「何を身勝手な論理を」と。納得する人は、現実に存在するアメリカの軍事力をどう捉えるのかと。

それでも、ケーガンは、軍事力の格差がもたらす安全保障の違いについてだけを視点において、もはやヨーロッパは戦略的パートナーではないと一刀両断。多少、論理の飛躍や批判はあるけど、平明な論理を開陳してる。

この本書は、解説にあるように、「ヨーロッパ」を「日本」に置換するとどうなるのか?という疑問が頭によぎる。そして、個人的にはもう一つあると愚見。「現実主義」と「理想主義」をどのように理解し、自分の立ち位置の選択を迫っているのじゃないかな。現実か理想かという単純な二極ではなく、理想主義のなかの現実主義者的行動もあるのではないかと思うわけで。

最後に、ケーガンのインタビューから引用

現在のヨーロッパが、たとえばイラクや北朝鮮のもたらす脅威に対して、許容度が高いのはなぜか。アメリカに比較して力が弱いからだと考えると分かりやすいと思います。 例えば、ナイフしか持っていない人は、森林をうろつく熊を許容できる危険だと考えるでしょう。この危険を許容しないのであれば、ナイフだけで熊と戦うしかない。しかし、同じ人が銃を持っていれば、許容できる危険についての見方がおそらく変わるはずです。戦うことだってできるのに、かみ殺される危険を冒す必要があるだろうかということになる。まったく正常なこの心理が、アメリカとヨーロッパの溝を生み出しているのです。イラク間題へのアプローチをめぐって意見が分かれたのもこのためです。

追伸:
アメリカのネオコンサーバティブを含む政治思想の現状解説は、少しふるいけど、『世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち (講談社プラスアルファ文庫)』 副島 隆彦 も一読アリかな。レビュー書く力はないけど 🙂

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