review

[Review]: 常識の壁をこえて

Leave a comment

常識の壁をこえて…こころのフレームを変えるマーケティング哲学

『常識の壁をこえて…こころのフレームを変えるマーケティング哲学』 金森 重樹, 池村 千秋

著者はダイレクトマーケティングの第一人者、ダン・S・ケネディ。監修者は、『インターネットを使って自宅で1億円稼いだ! 超・マーケティング』 の金森重樹氏。金森氏は東大法学部卒、中小企業診断士、一級販売士、行政書士として業界の常識を破る手法を実践して一躍有名マーケッターに。内容は、「ビジネスで使われる金言なんて信じていちゃだめだよ、あんなのウソ。もっと常識やルールを破らなきゃ」ってな感じの本。いわば、逆もまた真なり。

私たちはとかく「ルール」を欲しがる。ナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』にはルールが13個。スティーブン・コヴィーの『7つの習慣』には、まさに7つのルール。その他ビジネススピーカーや自己啓発、成功哲学のセミナーもしかり。でも、実際のところ、これらのルールはどの程度役に立つというのか。

  • 成功したけりゃルールを破れ! ――はじめに
  • 第1章「ポジティブ思考」のウソ
  • 第2章「生まれつきの素質がないと」のウソ
  • 第3章「大学くらい出ていないと」のウソ
  • 第4章「謙譲は最大の美徳」のウソ
  • 第5章「礼儀正しくあれ」のウソ
  • 第6章「クリエーティブであるべし」のウソ
  • 第7章「継続は力なり」のウソ
  • 第8章「運なんて関係ない」のウソ
  • 第9章「急いては事をし損じる」のウソ
  • 第10章「仕事と遊びははっきりわけろ」のウソ
  • 第11章「ハイテク万能主義」のウソ
  • 第12章「お客様は神様です」のウソ
  • 第13章「リッチになるには時間がかかる」のウソ
  • 第14章「元手がないと話にならない」のウソ
  • 第15章「商品が良ければ売れる」のウソ
  • 第16章「マーケティングの常識」のウソ
  • 第17章「マネジメントの常識」のウソ
  • 第18章「無用の変革は禁物」のウソ
  • 第19章 常識破りの成功者たち
  • おわりに

ご覧のとおり、これでもかってぐらいのテーマに関するウソが並べ立てられている。本書の特徴は、どのテーマについても”理論”からアプローチして論証しているのではなく、身近な話題(ビジネス、スポーツ、文化など)を例証にしている点にある。事例の数と示唆に富んだ内容には瞠目する。

そして、本書に登場するエピソードを、著者が自分なりのスタンスにもとづいて”適度”に一般化した作業の結果、「常識の壁をこえなきゃ」という結論に各章で至る。

たとえば、第12章「お客様は神様です」のウソに登場する一説。

顧客サービスで最低の評価を受けている国はおそらくドイツだろう。「アメリカと日本では『お客様は神様です』といおうスローガンが生きているのに対し、ドイツでは『つべこべ言わずに、とっとと金を払え』と言わんばかりだ」と、かつてのニューズウィーク誌は書いた。この記事では、ベルリンの香水店でオーナーに「おはようございます」と挨拶しなかったために追い返されたアメリカ人女性客のエピソードを紹介している。

これだけだど嘲笑されそうな内容だが、前後の文脈をあわせて解釈すれば不思議と説得力がましてくる。「逆もまた真なり」とはうまく言ったものだと納得させられる著者自身のフレーズが、随所に読める。

著書の下地をつくっているのは、「いかに実践が大事か」という考え方にある。だからこそ、無尽蔵ともいえる成功・失敗をあわせたケースが登場する。そのなかで一読すると、ある事実に気づく。

それは、ここ数年前から出版されている「実践マーケティング」とよばれるジャンルのマーケティング本に、よく似た話や言い回しが現れる。現れるというよりは、むしろ「使い回し」されていて、これが「ネタ本か」と氷解した。

このジャンルで有名なある著者が自著のなかで、「英語ができると英語圏の話を仕入れるだけで、日本では稼げる」と言っている。”稼ぐためのマーケティング”にはうってつけのネタ本。

ちなみに僕がもっとも印象にのこったのは、第16章「マーケティングの常識」のウソにある、「売上や市場シェアより大事なもの」。この論は、ほかの経営書でも紹介されているので、著書で紹介されているのは意外。会計事務所時代から顧客に奨励していた。

長期利用の顧客やリピーターの確保をもっと重視すべきだと、私は考えている。顧客ロイヤリティを高めることを最優先に経営を行えば、売上高アップなど経済的な目標もおのずと達成できる。(中略)顧客ロイヤリティは、売上高や市場シェア、コスト、ましてや「エクセレンス」なる正体不明のものに比べて、収益アップやビジネスの成功にはるかに直結しているという。顧客ロイヤリティは市場の評価を最も正確に反映しているからだ。

実際、コスト面においても新規顧客獲得にかかるコストは、既存顧客から収益をあげるのに比べて3倍以上になるとのデーターがある。そんなコストをかけるなら、サービスを拡充し、顧客ロイヤリティを高めるための商品を開発して提供する方が、一件あたりの収益も向上するから得策だと。

その事例に、トヨタのレクサスがある。63%という業界一の同車種買換率のこの車は、トヨタの全売上に占める割合はわずか2%。ところが、全収益の1/3近くを稼ぎ出している。

アイロニーな話だけど、この類の本を読んでも儲かることはない。咀嚼したつもりでも、それは「奇をてらっている」だけであって、メッキがはがれる。全く儲かっていない自分が書くのは度し難いが、著者が賞賛される点は、目次のウソを「裏」とするなら、「表」も熟知しているから。監修役の金森氏にも同じことがあてはまるのじゃないかと。いわば「表」の正攻法を熟知しているからこそ、「裏」の仕掛けがツボにはまる。

そういった清濁併せて飲む感覚は、ビジネスに必要なんだと再確認。ということで、「裏」を知りたい方には一読もありかな。

It\'s only fair to share...Tweet about this on TwitterShare on TumblrPin on PinterestShare on Google+Share on Facebook

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。