[Review]: ビーンズ!

ビーンズ!

『ビーンズ!』 レスリー・A・ヤークス, チャールズ・R・デッカー

昨年、アマゾンのベストセラーにもなっているので、今さら感が漂うけど。

目次

  • プロローグ
  • 第1章 情熱(Passion) すべては、情熱からはじまる
  • 第2章 人(People) 働いている人を見れば、その店がわかる
  • 第3章 商売を超えた温もり(Personal) 誰もが、常連になりたいと思っている
  • 第4章 商品(Product) まずいコーヒーに、お金を出す人はいない
  • 第5章 志と目標 どこに行きたいのかわからなければ、目的地についても気づかない
  • 第6章 四つのP 一杯のコーヒーが教えてくれる大きな教訓
  • エピローグ

シアトルのあるコーヒーショップ「エル・プレッソ」(本書では仮称扱い)の話。エル・プレッソは、6m四方の小さなお店で、カウンターは3mちょっと。そんなお店に、晴れの日も雨の日も毎日行列ができる。ここのコーヒーを飲むためなら、20分でも外で待ち続ける。

しかし、このエル・プレッソにちょっとした事件が襲う。それは、すぐそばにオフィスを構えていたシアトル有数のドットコム企業が、何百人という社員ごと遠く離れてしまった。当然、売上が目に見える形で落ち込んでいき、それにともない、社員には、将来への不安がよぎる。

そんなお店の状態を憂う店主のジャック・ハートマンは、経営コンサルタントとに相談してみようと決心する。そこへやってきたのが、キャロル・ウィズダム。

二人は、経営が芳しくない(といっても、他者からは全く問題ないと推察できるが)理由を探っていく。そして、「四つのP」というキーワードが導き出される。その四つのPとは?

ジャックとキャロルが出会うシーン(キャロルは一時間半前からお店の向かいのベンチに座っている)。

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「どうぞ」女性にラテを差しだしながら、ジャックは言った。「待っているあいだ、一杯どうですか?特別な人をお待ちのようですね。お相手の名前は?」

「あら、ありがとう。彼の名はジャック。そうね、私もそう思い始めているの。彼は特別な人だってね」

「ジャック?それは偶然だ。僕と同じ名前とは」

「私が会うことになっているジャックは、名人らしいの。ラテを淹れる名人」女性は茶目っ気たっぷりに言った。

「ということは、あなたがキャロル・ウィズダム?」

「ええ」

「ここに座って何を?てっきり、10時に店に来るものと思っていた」

「顧客(クライアント)の仕事ぶりをできるだけ観察することにしているの。こっそりとね。そうすれば、最初にクライアントの本当の姿を見られるでしょう?じつを言うと、ここにはー」

「二日前からいた」ジャックが言葉を引き取った。「気がついていた。僕もあなたを観察していたから」

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まぁ、「四つのP」は読んでお楽しみって、答えは目次にあるけどね(笑)。僕が、この本を手に取った理由は明快で、「今の事業をどうしたいか?」っていう問いに対して、自分の答えを出すための参考にしたかったから。昨年、この書籍が登場したときに、大まかなあらすじは知っていて、いつか読まなきゃって頭の片隅に置いていた。

本書の内容は、ビジネスの原理原則ともいうべき、「当たり前のこと」が述べられている。ただ、コーヒーショップの店主と経営コンサルタントとのやりとりという舞台設定に置換されると、ドラマを見ているような感じで、頭の中で映像として具現化しやすかったので、とてもわかりやすかった。

この当たり前のことが実践できないのが経営だと言われるけど、そんな安直な反論はしづらいな。特に、個人事業なら肝に銘じないとね。やっぱり、自分がどれだけ事業にエネルギーを注いでいるかの姿勢が問われているように思う。

休むのも働くのも、すこし楽をして手を抜くのも、手間を省くのもすべて自分のさじ加減。でも、その結果が売上としてモロに直撃するのが個人事業とも奢れる。四つのPについて、自分の方向とそれほどブレがなかったと確認できたし、経営の要諦を学べたのがイイ感じ(笑)

最後に、訳者あとがきにあるように、自己啓発や社員研修として読んでもオススメというところに一票かな。