帳簿に「手を入れた」時から転がり落ちる

カネボウ粉飾:起訴の公認会計士ら、売却先分散などを指導

東京地検特捜部の調べによると、カネボウは化粧品部門を中心に、決算前に駆け込みで商品を売りさばき、決算後に返品に応じる「押し込み販売」と呼ばれる手口で架空売り上げを計上していた。この際、会計士らは「(売却先を)1本で立てないで分散しなさい」と指導。さらに返品を受ける際、一度で大量の返品が重なると不正が発覚すると懸念し「返品時期はずらすように」などと指南していた。

経験と見聞から予測すると、規模の大小とわず、やるこたぁいっしょ。一度、帳簿に手を入れると、「虚構」と「実態」を管理しなくちゃならない。言うなら、昔の彼女の名前を寝言で言わないように「管理」するようなもん。

裏帳簿は、日商簿記1級保有者といった非常に優秀な人材がいれば作成可能。が、「作成」できるのと、「管理」するのは別問題。その管理にどれだけの心理ストレスと見えないコストがかかっているか、知られていない。

2001年に世界五大会計事務所のひとつアーサー・アンダーセンを解体に追い込んだエンロン事件。旧大和銀行の海外事業撤退の糸口となった大和銀行ニューヨーク支店の簿外取引損失隠蔽事件。山一證券しかり。

ただし、今回の事件で青山監査法人が解体に追い込まれるような気配は全くないから、今後のアメリカ公認会計士協会のロビイストたちのシュプレヒコールを高見見物。

「ほらぁ、アメリカでも起こったし、日本も市場から信頼を失いたくないだろ?せっかく、構造改革を推進しているところなんだからさぁ。だから、国際会計基準も統一したし、日米の会計士市場を解放しよう」

ってな感じ。それを恐れてかワカランけど、会計士協会は厳しい懲戒処分を検討しているらしい。

悲しいかな事はそう単純なものじゃないのも確か。つまり、企業-公認会計士の関係が、マブダチじゃなく、ジャイアントとのび太だからこの手の問題は絶えない。中小企業-税理士もおなじ。当事者もトリチョウでうたってるし。

「決算の『灰色部分』について容認を求められることはしょっちゅうある。一度、不正を認めてしまえば、翌年以降は『昨年は認めただろう』と企業から脅される」

報酬の額がハンパじゃないからね。「ダメです」とは言えないんだろう。でも、一度手を入れだしたら、チョーありえなーいミラクルが起こらない限り、あとは奈落にウェルカム。そんな企業は、遅かれ早かれ市場から退場するんだから、断りゃいいんだけど、思考停止しちゃう。日本の市場や企業、税制の背景が、米国と違うお家事情もあるから複雑。

「虚構」にノーが言えなくて、そこから逃げるように辞めちゃった意気地なしの自分に、自戒の言葉。

「数字は嘘をつかない、しかし、数字を使う人間が嘘をつく」

追記:2005.10.05

カネボウ粉飾:MUFGが「中央青山」との契約打ち切る

青山監査法人が解体される気配はないと書いたけど、契約見直し運動が広がるおそれがありそう。う〜ん、動向を注視。