おりこうさんおばかさんおお金の使い方

おりこうさん おばかさんのお金の使い方著者の板倉雄一郎氏は、91年にハイパーネットという会社を設立し、ビル・ゲイツ氏の目にとまるビジネスモデルを展開した。その後、97年に負債総額37億円で破産。ジェットコースターのような人生を詳細に独白したのが、『社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由』。当時、自分の頭のなかでは起業なんて夢のまた夢、サラリーマンをまっとうするだろうって思っていたから、「人の一生分を数年で経験する人もいる」とかみしめながら読了したのを憶えている。本書のテーマは、そんな板倉氏が伝えたい「ファイナンスリテラシー」についてである。

37億円の債務を負い、僕は自己破産しました。そんな僕だからこそわかることがあります。それは、世の中のしくみは、経済的教養の高い人々によってつくられ、経済的教養の低い人たちのお金が搾取されているということです。そこで、僕がこの本を通じてお伝えしたいのは、お金のしくみ、そしてインチキを見破るための知識です。『おりこうさん おばかさんのお金の使い方』

「ポイントは貯めてから使う」「積み立て保険に加入」「高額なモノを通販で購入」「株価チャートを参考に投資」「ローンを組んで家を買う」「投資信託を利用」———-これらに該当する人は、だまされている!と筆者はいう。

なぜ、本書のようなタイトルになっているのかは、「ポイント、貯めますか?」を例にとる。

家電量販店でポイントを使うかと尋ねられたとき、「貯めます」と即答する人は、 "おばかさん"で、「5%ポイント還元」と告知して、自分だけのお店で買い物をさせるお店は、"おりこうさん"、といった具合に、すべての項目で「おりこうさん」と「おばかさん」が提示されているからだ。

なぜ、おばかさんなのかは、本書を読んでいただくと合点がいくかもしれない。かもしれないと書いたのは、私見として「論理的すぎる」と感じたからである。頭脳明晰な著者に無知蒙昧な抵抗をするとしたなら(著者も承知していると前提で)、「論理より情緒」の記述が薄い。ナマでいえば、所有欲である。人は、わかっていても「おばかさん」になりうる。

  • ローンの金利は当社が負担!
  • 今日の百万円か、一年後の百二十万円か?
  • あなたは持ち家派?賃貸派?
  • 人気金融商品の秘密
  • 会社は誰のもの?

上記は本書に登場するトピックスのほんの一部だが、「お金のからくりと経済行為」について、わかりやすく説明している。ファイナンスリテラシーの向上に社会貢献したいという筆者の思いが伝わってくる。

もちろんファイナンスリテラシーを身につけずに世渡りするより、少しでも知っている方がなにかと便利である。

ただ、リテラシーと所有欲を切り離して読まないと、氏のブログに少数ながら寄せられる(感情的な)批判が浮かぶかもしれない。そう考えると、本書を「感情的にならずに」読了できるかどうかも、「リテラシー」として問われるのかと愚考した。

類似書をリストすると(筆者は憤慨されるかもしれないが)、橘玲氏の「黄金の」シリーズと「雨の降る日曜は…..」を併読したら、"におい"の違いがわかるかもしれない。