一億総マーケター時代の聞く技術

一億総マーケター時代の聞く技術―「明日の売れ筋」をつかむプログラム文字どおり、「聞く技術」をきめこまかに解説している。「個人名を名乗る」「まず結論を書く」「顧客の意見は聞かない」「まず事実の受け入れから始める」「あいつちを可視化する」「ほめ言葉を分類・類型化する」—–これらは、アンケート,ウェブサイト,eメール,掲示板などコミュニケーションツールを使いこなすためのかんどころである。もちろん技法そのものも紹介している。顧客の「声」に着目するための"事前準備"と聞いた後の"整理整頓"のメソッドが次々と登場する。

顧客の誰もが企業に直接コミュニケーションをとることができるようになり、ビジネスパーソンの誰もが顧客との接点に立つことになった。…..いまは「一億総マーケター」ともいうべき時代なのだ。一億総マーケターの時代、企業には顧客と対話する技術が必要だ。それが、顧客の声をマーケティングに活かす「聞く技術」なのである。『一億総マーケター時代の聞く技術―「明日の売れ筋」をつかむプログラム』

「お客様は神様」かもしれないけど、お客様の声は神の声ではない—–この前提を認識しておかないと、企業は顧客の声にどうしたらよいのかわからなくなり、ついには「声は使えない」とほうり投げてしまう。

顧客の声を聞く目的は、タイトルどおり「明日の売れ筋」をつかむためである。明日の売れ筋をつかむためのプログラムが「料理」ならば、顧客の声が「材料」だ。ただし、材料をそのまま使うわけにはいかない。

「顧客の声は使えない」と誤解してしまうのは、材料をありのままごったまぜにあつかってしまうからである。そうではなく、料理(=マーケティング)に活かすためには、材料を"調理する"必要がある。

調理方法は、大まかにわけると以下の3つである。

  1. 「意見」ではなく「事実」に着目する
  2. 「けなし言葉(否定)」ではなく「ほめ言葉(肯定)」に着目する
  3. 「意識」ではなく「行動」に着目する

「きく」という単語をこの3つにあてはめると次のとおり。

  1. 「意見」ではなく「事実」に着目する ーーー 聞く(hear)
  2. 「けなし言葉(否定)」ではなく「ほめ言葉(肯定)」に着目する — 訊く(ask)
  3. 「意識」ではなく「行動」に着目する — 聴く(listen)

たとえば、3.を聞きたいとき、「なぜ」よりも「どのように」と尋ねたほうが、顧客の「意識」よりも「行動」が引き出され、「事実」が見えやすいという。「なぜ買ったのですか」よりも「どのように買いましたか?」だ。

ほかにも、コミュニティサイト(メーリングリストや掲示板など)に寄せられる回答の行間を読んでいる。それらの回答はスレッド表示される場合が多く、スレッドの展開から「文脈」がつかめ、文脈のなかにニーズやアクションが含まれているという。

読了後、自分がいかに聞けていないかがよくわかった。ここでいう聞けてないというのは、「マーケティングに活用するため」という場合だ。問題解決や提案書を作成するための聞く(インタビュー)は、マシになってきているはず(笑)

また本書のフレーズの主語をかえると、違った気づきがえられると思う。たとえば、「明日の売れ筋をつかむため」を「明日のブログをつかむため」とすれば、1.の意味も書き手側に置換して理解できる。

「意見」と「事実」を混用して文章を書くと、相手に「自分の伝えたい内容」がなかなか伝わらず、結果、相手から「So What?」すら発してもらえないこともありうる。

あらためて「聞く技術」の奥深さを肌で感じた。