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中国人の愛国心

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中国人の愛国心 日本人とは違う5つの思考回路M先生の「中国人の愛国心」のエントリー(連載)から知り、即購入。読了後の感想は、ふたりの自分がいた。「なるほど、よくわかった。これからは、王敏先生の知見をこやしに中国人の思考回路を理解していこう」と「王敏先生が指摘する日本人の思考回路も中国人に知ってほしい」という自分。読了前は、後者の自分をえぐいぐらい放出していた。「中国ってやつは…..だ」の雛形で揶揄し悦にいる自分。読了後は、前者の自分が芽生えた。ただし、豹変してしまうのは短見。より理解を深めるための宿題を与えてもらった気分。

日本人には容易に理解できない中国人の精神構造を、本書は徹底的に分析する。キーワードは5つ。「愛国」「歴史」「徳」「中華」「受容と抵抗」。改革開放以降、急速に欧米化するライフスタイル。しかしそこには、中華文明という名の呪縛が横たわる。文化を重んじる中国人が抱える葛藤、そして小さな変化の兆し。知られざる心を暴く。『中国人の愛国心 日本人とは違う5つの思考回路』

  • なぜ彼らは「歴史認識」にこだわるのか。
  • なぜ「靖国参拝」に反対するのか。
  • なぜ反日デモを起こすのか。

これらを理解するためのキーワードが引用の5つ。そのひとつ「愛国心」について。

中国における愛国の始まりは、紀元前430年前に登場する有名な言葉、「修身斉家治国平天下」と考えられる。自分と国を大切することの重要性がのべられ、以来、この考え方は中国国民の地下水脈に横溢している。

中国人にとって「愛国心」をもつことは「大人への条件」であり、自分が中国人であることを示すアイデンティティのひとつに含まれる。

では、愛国の目的は何なのか?

一言でいえば、「強国政策」のためである。もう一歩進むと、「他国から侵略されない平和な国をつくる」という願望がみえる。要点は「侵略」。中国は「侵略されてきた」歴史をもつ(と認識している)。国や民族を問わず、中国という「国(土)」が外から侵略された。

だから、侵略されない国をつくろう。そのためには強い国をつくろう。まずは国民ひとりひとりが強くなろうと国から説かれる。個人が強くなれば国が強くなる、ゆえに侵略されない。それが、「修身斉家治国平天下」の理念である。

一方で日本からすると、この「愛国」という言葉は、中国とは異なる意味で解釈される。一例は、昨年の反日デモのプラカードに掲げられた「愛国無罪」という文字。

「愛国無罪」は、中国国内の七人がおこしたある政治事件に端を発している。事件の詳細は割愛するが、とにかく当時、「彼ら七人は国を救うために行ったのであり、国を愛する彼らが有罪なら、同じように国を愛するわれわれも入獄させろ」という運動がおこった。われわれとは、国民をさす。

中国では、「国を愛するがゆえに反政府運動を行っている人を、政治犯として有罪にすることはできまい」という"政府"へのアピールをもった言葉である。本来、政治犯罪と刑事犯罪を峻別しているのである。

俗に言う、「愛国のためなら何をしてもかまわない。物を壊しても、人に危害を加えても、何をしても無罪だ」という意味ではない。「愛国」をもとにした刑事犯罪を黙認していない。

では、政治と刑事を峻別しているにもかかわらず、なぜ昨年のような刑事犯罪のデモが起きたのか?それについても思考回路の違いをもって解説されている。

筆者の王敏先生は、中国の大学を卒業し、現在、法政大学で教鞭を執っている。ながく日本にふれてきた先生が、日中双方の文化の異質性に目を向けて本書を書いている。もちろん結論は、「互いに不満もあるだろうけど、なかよくやっていこう」だ。そのために、先生の専門分野である文化に焦点があてられ、「意外とほんとうのとこが知られていない」中国を平明に記している。

900年前に国民から売国奴とつばを吐かれた人物がいた。その子孫がいまだに冷遇されているという。ついには先年、処遇をあらためてほしいとまで訴えた。中国の国民性を説明したそのエピソードを読むと、いまの愚生は、どのように受けとってよいのか困惑した。

政治・経済という視点だけでなく、少しひろげて、「ああ、中国はまた"受容と抵抗"をやっているな」と穏やかに眺められるようなディアノイアを、本書をとっかかりにして獲得したい。

追伸
本書を読みながら、ふと、「言語(の構造)や大陸性に起因した思考回路の相違はあるのだろうか?」と疑問がよぎった。どなたかオススメの図書があれば教えてください。

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