何と引き替えにあなたはこの商品を買いますか?

nikkeibp: 食品の裏側を明らかにする(前編)/SAFETY JAPAN 2005 [インタビュー]/日経BP社

「今日一日であなたは何種類の食品添加物を口にしましたか?」——こう聞かれて,即答できる人物がいる.いま話題の本『食品の裏側 みんな大好きな食品添加物』(東洋経済新報社)の著者,安部司氏だ.[…..]実際,安部氏の本を読むと,現代の食卓がいかに添加物に依存しているかよく分かる.しかし,この本が従来の添加物を取り上げた本と大きく異なっている点は,「危険性だけを騒いでも意味がない」としているところである.

「食品の裏側」を読むと,「何を選択するか」というのを考えさせられます.わたくしのばあい,安部さんがおっしゃるような「手首の運動」をして,まず食品の裏側を見るようにしています.買う買わないという判断もあるのですが,「何が入っているか」を確認するためです.自分のなかで「何をトレードオフするか」が決まってきたあたりから確認するようになりました.

いくら嫌だといっても,明日からすぐ添加物を全面的に排除して,マクロビオティック(簡素で自然な食事法などを実践する健康法)のような食生活に切り替えられるかといったら,ほとんどの人はそんなことできません.

マクロビオティック関連には目を通すようにしていますが,実際のところ記事のとおり切り替えるのはかなり難しいです.コストもさることながら,手近な場所で入手できない現実があります.ですから,「何をトレードオフするか」と「自分が選択するものは何か」を考えるようになりました.

そういう目で食品関係の通販サイトを見てみると,安部氏が指摘する点に納得できます.それは,添加物の影にフォーカスし,それについて批判または比較して自社商品を販売しているサイトを見かけることです.

例えば天然酵母のパンとスーパーで販売している既製品が違うのはわかります.その時,メーカー既製品のデメリットを並べ,天然酵母の優位性を力説すると,読み手はトリビアルな知識を得られます.しかし,購入しようと背中を押されるかどうかは疑問です.

さっきのポテトサラダにしても,「合成保存料は使用していません」などとあえて表示している場合があります.しかし,もともと合成保存料は使ってはいけないものです.それをいうなら本当は,「合成保存料は使用していませんが,保存効果のある化学物質はいっぱい使っています」と書くのが正しい.そうすれば「そこまで怖い思いをしてまで便利でなくてもいい」と判断する人がでてくるかも知れません.情報をきちんとオープンにした上で「何を選ぶかは消費者の自由」というのが本来あるべき姿です.

「何を選ぶかは消費者の自由」というところの「自由を手にするメリット・デメリット」を,きちんと説明してみはいかがでしょうか.先の天然酵母であれば,メーカー製品やフツウのパンと比較するのはやめて,天然酵母だけでそのメリット・デメリットを説明します.消費者に「何を引き替えに購入しますか?」の決定基準となる材料を提供します.

手前味噌で恐縮ですが,一度食品に関心をもって完璧とまではいかなくてもそれなりに気をつけるようになりますと,既製品と比較した説明を読んでもあまり響いてきません.それよりも,「この手間暇とひきかえてに得られるメリット・デメリット」を訴求してもらうと,「一度試してみようかな」という好奇心がわきおこってきます.