音声多重放送の露天風呂#3

先週金曜日、以前お世話になった会社へゆく。19:30頃まで打ち合わせ。元上司と先輩の方々から「(露天風呂シリーズの)ブログがおもしろい!」とごちそうになる。折しも別のクライアントの方からもいただく。さらに、コメント欄にはリクエストまで。ハテ、ここでフト悩む。露天風呂の何がおもしろいのか。フリ○ンかキャンタマか。まさか、ッププ。若者の会話か。笑いの対象と笑いどころが気になる。笑いとは、自分が予想したプロットから少しズレたときに起こる「落差」にあると日頃考えている。今回は落差ではないか。う〜ん。まっ、いいや。

というわけで、キャンタマの続き、はしたない、もとい露天風呂の続き。いよいよ30代へ。くどいけど念には念を。すでに左耳では「ドコモショップ店員における手紙と恋愛の相対性理論」の激論が交わされ、正面では「巨人軍のスタートダッシュと団塊世代的快感」によって昇天しているなかで聞こえてきた会話。ただし、中身の意味がワカラナイので概略だけ。

30代は、「スロットとパチンコ」について延々語り合っていた。私の周りの諸先輩方のなかには、パチンコで生活している人がいるため、個々の単語の意味は理解できる。が、全体の意味やテクニカルなトピックスにおよぶと鳩が豆鉄砲を食ったよう。ただ、耳を欹てていると、どうやら以下の内容のようである。

  • 新装開店情報
  • スロットの打ち方
  • フィーバーの打ち方
  • 新機種の攻略法
  • 各店舗別最新情報

私自身、麻雀で生活することから足を洗って以来、飲む・打つ・買うの「打つ」は何一つやっていない。パチンコは生まれてこの方一度も経験なし、競馬も同じ。だから、正直、無尽蔵とも思えるトークにあっけにとられた。すばらしい情熱。

これまた絶妙なコミュニケーションをかわしている。50代とくらべると、しゃべる側の持ち時間は長い。平均2分ほどか。長くて3分超えるぐらい。そして、かわりばんこにしゃべる。見事に攻守入れ替わる。ほれぼれする。「情報交換」に徹している。ここには、駆け引きや慮るといった情感はない。ひたすら、「あの機種は○○だよ」「あの店は××だよ」「オレはこのあいだ△△と攻略した」などを交信していく。まるでブログを口語にしたらこんな感じかと思うぐらいトラックバックを打っていく。コメントではない。

パチンコの話ばかり聞いていると、思わず高校時代の風景が脳裏によみがえった。近鉄奈良線に、「布施」という駅がある。この駅はホームが2Fと3Fというふうに2つある。行き先によって乗り分ける。で、2Fのホームで停車しているとき、ある座席ポイントからパチンコ店のネオンサインがみえる。そこに腰かけて見ると、奇妙な現象がおきる。3Fの天井がさえぎって、ネオンサインの「パ」だけが消える。いわずもがなである。高校時代、これがツボにはまってしまった。彼女と帰宅途中、ツンツンと突いて指さすと、その方向には「パ」がないネオンサインが飛び込んでくる。彼女の頬が朱に染まる。それが小気味いい。津川雅彦と秋吉久美子のような乙加減。とツレに話たら、「エロオヤジ」と一蹴された。それでもあきたらず、ラグビー部のツレ6人と帰宅途中に、「ほらな、○○○やろ」と指さしながら電車のなかで地声で口にしたら、12本の足が飛んできた。癪に障ったから、座席の上にある荷物乗せにのぼってゴロンとしたら、"ドンビキ"と"爆笑"の極端な空間へと車内が豹変した。んなバカばっかりやりつづけた日々が眼前にひろがる。

それにしても、恋愛・野球・博打と見事に「日常」の会話が露天風呂で交わされる。ここには、拉致・耐震偽装・ライブドア・竹島領土問題など「非日常」の会話は一切ない。何が日常で何が非日常かに絶対はない。だからそんなことはどうでもいいやなんて思いつつも、なぜここには普段当たり前のように流れているニュースの片鱗すら示されないのだろうかと考えた。外国人ならこういったシチュエーションのとき、何を話すだろう。温泉という習慣が始まった頃、いにしえの人たちは、フリ○ン、場合によっては艶を共にしながら一体どんな話をしたのだろうと、少し軸を広げてのぼせてみると、ええ塩梅になってきた。さぁ、あとはサウナで最高のひとときをすごすだけと、勢いよく露天風呂をあとにした。