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[Review]: 真実の瞬間 SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか

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真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか

空港へ到着したとき、ホテルに航空券を忘れてきたことに気づいた。あなたならどうしますか? 出発時刻は迫っている。大事な商談を控えている。もしあなたがSAS(スカンジナビア航空)に搭乗するなら幸運。SASの航空券係ならなんとかしてくれる。「航空券をお持ちでないなら搭乗できません」と突っぱねられない。大丈夫。

顧客本位のサービスを実践したいなら、問題処理の権限とそれに付随する責任を最前線の従業員に付与すればいい。それには従来のピラミッド型企業形態を逆転させなければならない。

一九八六年、一〇〇〇万人の旅客が、それぞれほぼ五人のスカンジナビア航空の従業員に接した。一回の応接時間が、平均一五秒だった。したがって、一回一五秒で、一年間に五〇〇〇万回、顧客の脳裏にスカンジナビア航空の印象が刻みつけられたことになる。その五〇〇〇万回の”真実の瞬間”が、結局スカンジナビア航空の成功を左右する。その瞬間こそ私たちが、スカンジナビア航空が最良の選択だったと顧客に納得させなければならないときなのだ。

『真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか』 ヤン カールソン

1980年、17年間黒字経営を続けたSASは危機に瀕していた。オイル・ショックに端を発した航空業界を襲った旅客・貨物市場の不況。その波に飲み込まれるようにSASも2000万ドルの赤字に転落する寸前だった。危機に直面したSASは若干40歳のヤン・カールソンに社長就任を要請する。

カールソンはただちに経営環境と自社の実態を把握するべく全力を尽くした。それは、目標設定と目標達成の方法を確立することにほかならない。つまり新しい経営戦略の策定が急務だった。

その後、ひとたび経営戦略が策定されるや経費を「悪」ではなく「資源」ととらえた大胆な行動に打って出た。

そこで私たちは、資産や経費、業務を詳細に検討して、自問してみた。「はたしてこれはビジネス旅行者の要望に応えるのに必要だろうか」。もし答えがノーなら、例え社内的に重要なものでも、そうした経費や業務はすべて段階的に廃止した。また、もし答えがイエスなら、さらに支出を増やして充実を図り、競争力を増強した。[…]一つの項目を一〇〇パーセント改善するかわりに、一〇〇の項目を一パーセントずつ改善していくことにしたのだ。

『真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか』 ヤン カールソン P.35

カールソンは瞠目するような再建策を取締役会に提案している。2000万ドルの赤字経営なのに改善費用5000万ドルの追加支出を承認するようにせまった。これがSASの分岐点となった。

  • 経営環境を綿密に分析
  • 目標を設定
  • 戦略を策定

結果、リスクに挑んだ。もし、カールソンが経済・財務について高度な専門知識を有していたならSASはSASでなかったかもしれない。それらの専門家は考えることに没頭している間に機会を失ってしまいかねない。

1つの問題に対して10の解決策を立案し、その中から1つを選択しようとして、また新しい解決策を5つ思いつく。つまり「実行」できない

カールソンは決断する。組織形態の逆転。ピラミッド型組織をひっくり返した。1983年、SASが世界最高の航空会社と格付けされた所以は、”真実の瞬間”を従業員に熟知させたところにある。

従業員に真実の瞬間を

徹底した顧客本位のサービスを提供するとき、”真実の瞬間”に遭遇した最前線の従業員が、「稟議書」「報告書」を書いているようではそのサービスは画餅にすぎない。”真実の瞬間”は、最前線で処理されなければならない。必須は権限と責任の付与。

とはいえ、権限と責任の委譲に論が及んだとき、リーダーシップとボトムアップを峻別しがち。そんな短見を諭すように、カールソンは「リーダー・中間管理職・現場の従業員」それぞれの役割を解説して、各々の役割の必要性を平明な論理にのせて開陳している。

私がいま述べた見解は、ごくありふれた、あたりまえのものだと感じられるのかもしれない。なぜ分権化の説明はこのように簡単なのだろう。それは論理的に当然の帰結だから。企業の営業経費を負担し、収益をもたらしてくれるのは、余人ならぬ顧客である。したがって、すべての経営計画は、顧客の観点から策定されなければならない。顧客の要望を最もよく熟知しているのはだれか。もちろん、顧客にじかに接している最前線の従業員だ。そこで当然、商品計画に関する最大限の影響力と、最も多くの責任と権限をもつ必要があるのは現場従業員ということになる。

『真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか』 ヤン カールソン P.186

書かれていないことはなにか?

読了後、ひとつの疑問が浮かんだ。「書かれていないことはなにか?」。それは真実の瞬間に遭遇する最前線の従業員の資質だと思う。責任と権限を持つ最前線の従業員。その資質とは何なのだろう。教育でまとえるものなのか、あるいはそなえていたものか。興味は尽きない。

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