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[Review]: ブログスフィア アメリカ企業を変えた100人のブロガーたち

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ブログスフィア アメリカ企業を変えた100人のブロガーたち

これからビジネスブログを立ち上げようと考えている方や現在も試行錯誤しているビジネスブロガーに一読をおすすめする。著者はロバート・スコーブル氏。スコーブルはマイクロソフトに勤務していたとき、彼個人のブログを立ち上げた。このブログがのちにマイクロソフトの企業イメージを一新させるほどの影響をブロゴスフィアに与えた。それまでマイクロソフトは『悪の帝国』と揶揄され、シリコンバレー界隈では忌み嫌われていた。『悪の帝国』のイメージを和らげたのがスコーブルのブログだった。その詳細が「第一章『悪の帝国』の使者たち」に記載されている。そしてスコーブルは2006年、ベンチャー企業に転身する。そのとき、ブロゴスフィアは氏の退社をめぐって騒然となった(参照:スコーブル氏のマイクロソフト退社に、ブログ界は騒然)。

ごく小さなビジネスによる例もある。例えば、川崎の一伸歯科医院だ。このブログでは、FAQや患者の声などを読むことができる。このブログを紹介してくれたシックス・アパートのジンジャー・ターレイによると、同歯科ではこのブログを、「リーズナブルな投資」だったと話しているという。実際、リーズナブルである。同歯科の収入は1年で180%も跳ね上がったからだ。このブログのスタイルは日本ならではのものだと思うが、しかし小規模なビジネスについてもブログが大きな可能性を持っていることをよく示していると思う。この歯医者ブログを見ると、鉛管工、パン屋、寿司店などによってブロクの大きな可能性を感じる。『ブログスフィア アメリカ企業を変えた100人のブロガーたち』 P.195

ビジネスブログがマーケットに与える光と影を俯瞰しつつ、わかりやすく説かれている。「なぜビジネスブログがマーケットに影響を与えるのか?」と尋ねられたら、「よくわからないけど、この本に今のブロゴスフィア(将来どうなるかわからないけど)がよく描かれているよ」と私なら答える一冊。おりしも先日、「ブログやSNSの書き込みには信憑性があると思っている人が8割」という調査結果が報告された。

いまや「口コミ」をつくりだすまでになっているし、実際、米マツダはそれに近いことをやろうとして「ブロスフィアの歴史に残る失敗」をした(参照: 悪評で検索ランキングがあがることも)。これも本書で紹介されている。

アメリカでは、いくつかの企業がCMの効果に疑問をいだきはじめた。もはやCMが彼(女)らに届かなくなっている。特に若い世代に届かない。だから何とかビジネスブログを立ち上げて、少しでも彼(女)らと「対話」すべく模索しはじめた。その様子が数々の企業の事例として登場する。なかには、「日本ではそんなことがあるだろうか?(ひとりのビジネスマンがブログにポストした48時間後に企業のCEOから面会を求められた)」もある。ひとつひとつがリアルタイムに進行しているトピックなのでおもしろい。本書で紹介されたブログはすべてアドレスが記載されているので訪問できる。今わたしがこのレビューを書いている間でも更新されているかもしれないダイナミックさがある。

ブログには他のコミュニケーション・チャネルにはない特徴がある。それが「ブログの6本柱」。

  1. 公開性がある
  2. 見つけやすい
  3. 社会性がある
  4. 感染性がある
  5. シンジケート性(配信性)がある
  6. リンクできる

6本柱の説明を読んで、「ブログは技術と心理の融合」だとあらためて得心した。MovableTypeやWordpressなどのアプリケーションにRSSを付加して「新しい技術」をウェブ上で体現させた。そしてそれらは、「人に何かを伝えたい、つながりたい」という人間の心理とマッチングした。

だから「情熱のこめられたほんとうの物語」は一瞬で感染する。また企業が何か失敗したときでも、それをしっかりと公開すれば、彼(女)らは応えてくれる。ときには「アドバイス」までくれる。そこに社会がある。

では、ブログがすべてを変えるか?というと、それは早計だ。本書でもそのあたりをきちんと吟味している。「ビジネスブログを書かないほうがいい企業」や「ブログをやらない理由」などを分析している。

なによりも各国と各企業の対比が興味深かった。MicrosoftやSunは、社員がブログを書くことについてオープンであるし、むしろそれらを利用して企業イメージを向上させてようとしている。他方、AppleやGoogleはかなり閉鎖的。また、国によっても違う。ドイツはビジネスブログがほとんど機能していない反面、日本は世界でも突出したブロゴスフィアを形成している。ブログを書いている人、ブログを知っている人、そしてブログをビジネスとしてマーケティングに活用している企業の数は世界でもトップクラス。

最後に「第15章 会話の時代」の冒頭を紹介して了。

時には、道具がただの道具にすぎないことがある。私たちの生涯を通じて、ハンマーはほとんど形を変えていない。ハンマーについて本を書くのに何年もかかったとしても、別に内容が古くなって困ることはない。たいていの道具は、そういうものだ。だが、ブログは違う。
本書執筆にかかった9ヶ月の間にも、ブログとブロゴスフィアの変化はとどまるところを知らなかった。750万に満たなかったブロガーの数は、2000万以上に増えた。今では1秒ごとに新しいブログを立ち上げられており、2秒ごとに古いブログが閉じられている。同P.324

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