はるか昔に日本へやってきた見送幕の神秘

大津祭

今年も大津祭へ出没。といっても今回は宵宮へゆく。写真は昨年の本祭の様子。祇園祭と比べれば規模は到底およばないけれど、まったく違った風情があって優雅な雰囲気をいつも堪能させてもらう。17:00頃からくりだし、曳山が組み立てられていく様子を眺めながら、21:00頃まで市中をそぞろ歩く。途中、一杯ひっかけてほろ酔い気分。お囃しがあり、各曳山では本祭にむけて風雅な音色を奏でていた。

大津祭

今回、ボランティアガイドのご老人から非常に興味深いお話を伺った。御仁曰く、「若い人がこれだけ関心を示してくれるのは嬉しいからつい熱弁をふるってしまいました」と照れながらも、私とパートーナーに30分ほどだろうか語ってくれた。

それが、「龍門滝山」見送幕の「トロイア陥落図」(参照: 月宮殿山)。

この見送り幕は「トロイア陥落図」と題され、有名なホメーロスの叙事詩「イリアス物語」の中でもとくによく知られた「トロイの木馬」の場面を描いたタペストリーの一部です。誰もが知っているトロイの木馬はここに描かれている場面の右側、全体の中央に描かれていましたが、現在その部分の所在は不明です。

1580年から1620年ごろの間にベルギー・ブリュッセルで制作されたのだが、どうやってこの陥落図が大津へやってきたのかは不明。とにかくはるか昔大津の町衆が買い取ったらしい。とても数奇な運命をたどっている。5枚が日本へやってきたらしい。これ以外に3枚現存(1枚は焼失)している(参照: 祇園祭鯉山町衆)。

東京芝増上寺や京都知恩院、加賀前田家にあるのを見聞すると、私は勝手に「徳川時代にキリスト教とともに貢ぎ物としてやってきて、徳川家ゆかりの地に配布された」のではないかなぁと妄想。

それにしても、16世紀頃に制作された幕がどうやって日本へたどりついたのかって考えるだけで、とても神秘な一枚に映るのが不思議。