つなぐ

今年も箱根駅伝をテレビ観戦してようやく正月を実感できた。昨年、8区を観ている途中、年甲斐もなく泣いた。今年は10区で泣いた。年々、各スポーツは興業になりつつある(>ぶっちぎりT○S)。箱根駅伝も追従せざるを得ない。今年も恣意的なカメラワークに違和感を覚える。が、脳は悪態を吐き、身体は逆らえず。合言葉「2年分の優勝」のゴール横でむせび泣く難波元主将が映し出されたとき、トレースしてしまった。「つなぐ」を教えてくれる学生のみなさんに深謝。

雰囲気が変わったきっかけは、前回の悲劇だった。首位を走っていた8区の主将・難波祐樹が脱水症状を起こした。途中棄権してもおかしくない状態で、必死にタスキをつないだ難波。その姿は部員の胸に、「優勝して先輩に恩返しを」という目標を刻んだ。共通の目標達成に向け、自然と互いの長所を認め合う大人のチームになっていた。YOMIURI ONLINE 「かみ合った4年生、復路盤石の順大…箱根駅伝」


昨年、往路優勝に続いて総合優勝を期待しつつ観戦していた。素人が「もう優勝するだろう」と無知をさらけだしていたら、突然、8区で主将が歩いた。仲村明監督が管理車から降りて棄権させようかどうか迷いつつ、主将に触れようと近づくと、なかば意識がないなか、「よける」ように左右にふらつく。後ろからは選手たちが抜いていく。足が痙攣しているのか、直立していない。進む方向とは違う向きをした足を必死に前に押し出す。区間20位の記録で9区に襷をつないとき、「意識がなかった」とも受けとれた。なのに、襷をつないだ。ほとんど歩いて。

土壇場で最大限の力を発揮した今井の脚力には脱帽するほかはないが、選手の適性を冷徹に見極めた仲村明監督の選手配置があってこそだろう。今井は「2区を走りたい」という希望も持っていたという。だが、もしも山登りを得意とする今井が5区にいなかったら…。歴史的な大逆転劇は生まれなかったかもしれない。[…]ここまでくれば後は仕上げだけ。実力者の長門が9区で区間賞を獲得すれば、10区のアンカー松瀬も区間新記録で、優勝に花を添える。まさに、誰もが自分の役割と実力を知り尽くした落ち着いたレース運びだった。 YOMIURI ONLINE 「順大、役割・実力知り尽くした完璧なレース運び」

「山の神だけのチーム」と揶揄されたくないからそれぞれが自らの役割を強烈に果たしていく。山の神の貯金をいかに守るかという展望が間違っていたことを観ている者に認識させてくれる。守るのではなく攻める。一人で走っているのではないというメッセージが各区間で残った。9区で区間賞、10区で区間新。昨年の悪夢を覚えている素人は、「何が起こるかわからないから着実に」と心中祈っていた。しかし、2位との差を確実に広げるのが、現場のランナーにとって「着実」だった。

「誰もが自分の役割と実力を知り尽くした」ランナーを見極める仲村明監督。冷徹に配置できるのは素晴らしい。が、そもそも「知り尽くす」ために何をしたのだろうか?

箱根駅伝は「つなぐ」ことを教えてくれる。それ以上に、「在り方」を伝えてくれる。月並みですが、選手のみなさん、ご苦労さまです。ほんとうにありがとうございました。順大のみなさん、2年分の優勝、おめでとうございます。そして、襷をつなげられなかった大学のみなさん、涙を脳裏に焼き付けて来年待ってます。