"お客様第一"では不十分

朝日新聞(1月13日付)に、雪印乳業社外取締役・元全国消費者団体連絡会事務局長 日和佐信子氏のOpinionが掲載されていた。タイトルは、「不二家問題 お客様第一では不十分」。一読して得心した。

雪印乳業はかつて乳業のトップメーカーで、食品でも大手だというプライドを持っていた。"あの事件"のあと、6千人いた会社は1500人まで縮み、総合食品メーカーからチーズとバター、マーガリンだけを作る「中小企業」になった。

今、雪印乳業は、社外の人を取締役や企業倫理委員会のメンバーに迎え入れ、「外の目」を採用した。定期的に消費者代表との意見交換もしている。

製品や経営について意見をもらうモニター会も始めたが、その中には、事件以来、雪印の製品を一切買わない人も入っている。年に一度、工場を地域の人に開放して楽しんでもらう催しもある。2007年1月13日付朝日新聞社 「雪印の製品を一切買わない人」

雪印の製品を一切買わない人」が含まれている。これが肝要だ。問題が起きた企業は「お客様第一主義」を掲げて再生をはかる。たしかに「お客様第一」は必要であるが、十分ではない。まず何よりも「消費者」を見据えなければならない。

第一は、買ってくれない人も含めた「消費者」であるべきだ。消費者全体に理解される企業活動をしなければ、企業は社会に受け入れられないのだ。[…]お客様と考えると、買ってもらえそうなきれいなパッケージと売り文句で工夫をすることになるが、消費者と考えると、どうしたら誠実で、本当にわかって選んでもらえる表示かを工夫する義務がある。そうすれば、仕事のミスや問題を隠そうという発想はできなくなるはずだ。2007年1月13日付朝日新聞社 「雪印の製品を一切買わない人」

以前、ある歯科医院で「定期健診が頓挫してしまった人」を対象にインタビューさせていただく機会があった。この記事と比較するのは両者に失礼かもしれないが、見方によっては、その方々たちは、「お客様」ではなく「消費者」なのかもしれない。実際、そのインタビューから多くの「物語」をかいま見た。

「消費者」とは誰であるか考えると範囲が広すぎてとらえどころがない。「顔が見える」お客様へ目が向く。しかし、とらえどころがなく、わからないからこそ、自ら考えるのだと思う。一朝一夕にはできない取り組みとはいえ、いくつものヒントがあった。