そもそもという地図

靴を選んだり、服を探したりしているとき、「今のオレは店員さんからどう映っているのだろう」ってわくわくする。販売員の経験がないから、そちら側の実景が思い浮かばない。手にとり、ひとりぶつぶつ言いながら、もとへもどす。奇妙奇天烈な客なんだろうな。

入念にリサーチして満を持した買い物と衝動買い、ふたつは同じ買い物でも「やっちゃった」感の度合いに大小がある。満足の質も別。もともと位相が異なる。でも、ふっと、思う。「そもそもなんでゲットしちまったのかね、これを」なんて。それがわかれば、もう少し貯金がふえるのかもしれない。

そういえば、自分と馬が合う店員さんは、「そもそも」を尋ねてくる方が多いのじゃないかな。あからさまに「ご主人、そもそもなぜそれをお求めか?」なんてないけど、さぐりの入れ方がウマイ。

この間の靴を買ったときもそうだった。黒の靴を選んでいるわりに決めかねている姿に業を煮やした?!店員さんが、「シューズ系をお求めですか?」と尋ねてきた。それがスイッチ。そのスイッチが入って、私が「うん」と答えて、回路が動き出すと、「どのようなお召しもの時にはかれますか」と続き、どのようなシチュエーションかなんて信号が飛び交う。

AmazonやGoogleは優れている。重宝している。でも、ときに自分が何を求めているのかつかみきれていないときは歯が立たない。それは、私のリテラシーに問題があるのだろう。豊富な語彙と論理的な推察を持ち合わせていればたどりつけるかもしれない。

でも、そうでない私にとって、レコメンデーションでもアフィリエイト広告でも、検索データベースでもない、対話が宝物にたどりつくための地図となる。