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コーヒープレスのプレゼン

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先日、スターバックスにたちよったところ、店前でコーヒーの実演会をはじめるところだった。「今から始まりますのでぜひ」と声をかけられたので、いつもならスルーするところ、なぜだか立ち止まってサンプルのコーヒーが注がれたカップをいただいた。

「本日はコーヒープレスを使ったコーヒーのいれ方を実演いたします」とのあいさつからプレゼンがスタート。プレゼンテーターは女性。アルバイトなのだろう。かなり緊張している。私に差し出したカップがブルブルふるえていた。

そらそうだ、店前には20〜30人程度の人だかりができ、一斉に、彼女へと視線が注がれる。経験した人ならわかる。数十個の瞳と私の眼が空中で交差するとき、不安と快感が同時に到来する。

私はできるだけ穏やかな顔をしようとつくろって、最初の数分だけオーバー気味に頷いていた。自分が同じ立場にたったとしたら最初に「目が合った人」と「リアクションがある人」を発見できれば、妙にうれしい(私だけかもしれないが)。一方通行ならなおのこと。

そこに言葉はない。私が発話する信号に相手の身体がどう反応しているかだけが手がかり。

大きな声でわかりやすくゆっくり話すようにとアドバイスされたのだろうか。

とても声が大きい。ゆっくり説明している。聞いている方はわかりやすい。ただ、ゆっくり話すので、声の震えが伝わってくるし、言葉の使い方はときに妙だったりするけど、それはそれで味のあるプレゼンのスパイスみたいなものだ。

コーヒープレスとコーヒーを買ってもらいたい一心の広告。

今回はバレンタインデーにちなみチョコレートを口でころがしながら飲む企画。それにマッチする豆がレコメンドされ、コーヒープレスの使い方から賞味の作法まで教えてくれた。「おいしいコーヒーを召し上げれ」がこもっている。だから聴衆にすぅっとはいってくる。

ほんとうにおいしかった。コーヒープレスで飲んだことがなかったので、カップにほんの少し残るひいた豆も乙。ペーパーの匂いもない。チョコと一緒に風味を味わうなんてはじめて。新鮮。

おもわず、よし、買おうと店に入る。根が単純。値段をみて腰がひける。360cc ¥1,780。う〜ん、ちょっと迷う。今のペーパーフィルターを使い切ってからにしよう。

ごめんなさい、プレゼンのバリスタさん。でもありがとう。

プレゼンに必要なのは情熱。スピーチの仕方やことばの使い方といったテクニカルよりも、「何を伝えたいのか」「どんな気持ちなのか」「ほんとうのコーヒー」が伝わってくる一生懸命さが私の心をゆさぶるのだと実感。

見知らぬ人がたまたま彼女とコーヒーを媒介してひとつの空間をつくりあげる。それが街角。言葉と反応がおしくらまんじゅうしている。不如意の連続、行為の一回性。あのとき、どれくらいの人が、コーヒープレスでコーヒーを飲みながらチョコをたべている自分を想像したのだろうか。想像力を刺激してくれるもの。それがバリスタのプレゼン。

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