包含

2010.09.16 晴れ

いつもより60分早く目が覚めると1日が25時間になったみたい。60分早い朝の人工音は準備中で景色は灰色だ。これから灰色の濃度は高くなっていく。二度寝の信号を断ち切る「何か」を意識して身体を起こす。ほんとにゆっくり起き上がる。身体の部位を確認しながら。今朝は左肩の凝りが気になった。

WPの制作。ドメインを取得してレンタルサーバの設定を完了したのでこれから作り込んでいく。小さく産んで少しずつ膨らませて運用するやり方を変えていない。いつも顧客にその点だけを説得する。ただし結果は二つに分かれる。止まるか進むか。

女性がサントリーのオールフリーを売っていた。入口の自動ドアから数歩の場所。買い物かごを取りに行けば接触するポイント。キャンペーンや特売品を売るときはいつもココだ。

女性の声を耳にした時、「この女性は売る」と感じた。根拠はない、何となく。自分の耳に届いた声の抑揚と声色から直観した。こういうシーンに遭遇したら直観したプロセスを検証する。プロセスがないから直観かもしれないのになんとなく遡らずにはいられない。

過去に聞いた声が蓄積されている。すべての声を完璧に記憶していないし、一度耳にした声を後から再生してもらっても同じと判定できない。ただ漫然と感覚的に覚えている声があって、その中には大好きな声、好感情を抱く声、落ち着く声、クレバーな声、冷静な声、苦手な声、離れたい声、不快な声などのラベルを貼っている。

売り子の女性の地声を聞き分けられない。ただ耳に届く声はよく通り甲高くない。力強い。圧迫感がない。スッと入ってくる。何より声が直線じゃない。義務的に発生している直線的な声ではなく飲んでほしい気持ちを緩急つけて訴える。

15分ほど観察していたら6本入りの箱が4箱売れた。その販売ペースを評価できない。基準を知らない。でも驚いた。買う人によって口調や言葉を変えている。お年寄りが手に取れば他と違う点をゆっくりと説明するし、30代の夫婦が迷っていたらコストや味を早口で紹介していた。

入店許可証をつけていたので従業員ではない。こういう販売システムの仕組みを知らない(知らないことだらけだなぁ)ので歩合か固定かを判別できない。女性が「売る」ということに徹している姿を自分は感じ取った。あの手この手で歯科医院の院長に電話をつなげようとするセールスとは違う「売る」のスタイル。

女性の前を通り過ぎてインスタントラーメンのコーナに差し掛かると男性がいた。男性は従業員。インスタントラーメンの箱を通路にまき散らしてカート1台がギリギリ通り抜けられる幅に狭める。まるで1/4コマ送りのDVDを鑑賞しているようなスピードで商品を棚に”置いて”いく。いつものことだ。10分後, 15分後, 20分後、悪意を持った僕は男性の前を通るとインスタントラーメンのコーナは変わっていない。間違い探しの最後の1個を探しているみたいだ。よほど慎重に1個1個のラーメンを品定めしながら箱から出しているのだろう。

根拠がないまったく下品な金額を僕は想像する。男性の外見からして女性より多額の報酬を得ているだろうと。「不合理というのは何かの存在があり得ないことではなく状況があり得ないことを言う」らしい。売場の現場は包含している。何を包含しているのか。現場にいた人が「何か」を切り取り解釈する。