diary

果報

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2011.04.26 曇

第十七候、霜止出苗。桜が散って緑色が風景の階調を司る。田植えの準備。できない方々がいる。いくばくか。心情を察しようにも想像の外側にある。その方々を思い巡らせるとばくちにたてば言葉は失われる。まったく見つからない。そのなかでなんとかして見つけようとする。なんとなく無駄だと思っていても。

08:00すぎに出発。京都駅へ30分ほど休憩して舞鶴へ。西舞鶴駅下車。Mさんが迎えにきてくださっていた。ランクル。最新の車種。値が落ちない。海外では中古が重宝されているとのこと。砂漠で止まらない車。日本のメーカーは堅牢な車をつくっている。精密で機能的。それらの要素へラグジュアリーを加える。ユーティリティーとラグジュアリーを高いレベルで両立させる。難しい仕事。日本のメーカーはその次元を挑戦している。

15:00前に舞鶴を失礼してMさんの事務所まで車で向かう。雑務を片付けてからMさんと食事。数年ぶりに伺った寿司屋さん。なつかしい。11年前、会計事務所でお世話になっていたころ、先輩が何度か連れて行ってくださった。

腹の底から笑えるお話、旨いお料理、美味しいお酒、この三つが揃ったシーンを味わえ我ながら果報者だなぁと感じ入る。自分の幸福を自分で感じ入っていられるなんておバカでお調子モンである。のんきだし幸せだ。

往復の列車のなかで 『人間の建設』 小林 秀雄, 岡 潔 を読み始めて読み終える。知情意をゆさぶられたと確信できた本。確信できる本は少ない。何度も読み返す本は稀少であることとおなじ。

小林 (中略)それからもう一つ、あなたは確信したことばかり書いていらっしゃいますね。自分の確信したことしか文章に書いていない。これは不思議なことなんですが、いまの学者は、確信したことなんか一言も書きません。学説は書きますよ、知識は書きますよ、しかし私は人間として、人生をこう渡っているということを書いている学者は実に実にまれなのです。そういうことを当然しなければならない哲学者も、それをしている人がまれなのです。そういうことをしている人は本当に少ないのですよ。フランスには今度こんな派が現れたとか、それを紹介するとか解説するとか、文章はたくさんあります。そういう文章は知識としては有益でしょうが、私は文章としてものを読みますからね、その人の確信が現れていないような文章はおもしろくないのです。岡さんの文章は確信だけが書いてあるのですよ。『人間の建設 (新潮文庫)』 小林 秀雄, 岡 潔 P.110

「確信」を考えながら読む。強く賛成して読む。すぐに反発する。学者の先生方が確信を書き連ねたら学問にならない。そんなふうに反論してみる。二人の対話に賛成と反発を挿入して読み、そこから自分の思考をあみだしてくなる。あみだせない。もどかしい。くやしい。

岡先生は「確信のないことを書くということは数学者にはできないだろう思いますね」と云う。「確信しない間は複雑で書けない」と。

僕の確信と両先生の「確信」は異なっていて、僕は「確信」の領域へ届いていない。直観と確信が離れている。「それはあなたがそう考えただけでしょ」と指摘されたらこわい。その恐怖を克服するために「確信」があるような。同語反復の域をぬけだせない。その領域の縁すら見えていない。それはわかった。「確信」をわかっていないことをわかっただけでもありがたい。

5月はライブを2本観に行く。ライブハウスへ足を運ぶようになって、感覚がほんのわずかに広がった。広がった感覚はいままで気づかなかったことを掬ってくれるようになった。歌っている人、演奏している人、ステージに立つ人、裏方の人。その人たちがつくりだす音楽を受けとめる人。両者が調和したとき、常態とは異なるマインドが自分のなかでわきおこる。

そんなマインドを体験したら、「ああ、このひとは僕の話を心底聞きたくないんだなあ」と感じられるようなった。ならば黙っている。相手の人が不自然に話題を切り替えてもそれに対して怒りはない。黙っている。すると向こうは沈黙をさけて気をつかって話しかけてくる。煩わしいと思わない。ただ聞いてすっかり流しているだけだ。別れたあとには何を話していたのかまったく覚えていない。思い出す気もない。自分でもおどろくほど淡々としている。鈍感になった。ぼくのなかではその人はもう存在しないけど、目の前にいる間は存在している。

ある感度が向上すれば、それと引き替えにある感度は低下する。そうして気持ちの均衡を保っている。

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