一期

2011.09.15 晴れ

まあぁるいお月さんを眺めながら公園でコロナビールを飲む。見えたり隠れたり。電気の明かりがなかったら真っ暗のなかに口をぽっかりあけた感じにも見えそう。瓶ビールを直接飲むスタイルを好んでいる。口を直接つけて飲むだけでちょっぴりクールでアダルト。

第四十四候、鶺鴒鳴。鰤、平政、そして間八。御三家。天然の新鮮な間八を食べたいなぁ。コリコリの食感を楽しみながら気が置けない誰かと与太話してね。

花鳥風月のうち、鳥に関心がないので、私の場合は花鳥風月ならぬ花雲風月。いまの時期からもう少しあとにかけての雲は見ていておもしろい。

“ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)” 伊藤 計劃 の冒頭で描写されるひまわりの効果はない、と農水省が発表した。ひまわりを使った放射性物質の除去効果はないって。リアルがSFの誤謬を少しずつ修正していく。反対にリアルがSFへ近づいてく。“隠れていた宇宙 (上)” ブライアン・グリーン なんて読んでみたら私にはもうSF。

いま読んでいる“あなたのための物語 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)” 長谷 敏司もめちゃくちゃおもしろい。ゾクゾク。人間の根幹は、食と排泄かもしれないって感じる。

医療技術が進化して、躰のありとあらゆる部位を交換できるようになったとしても、私は食べなければならない。仮に「食べる」行為が、単純なエネルギー補給のような代替行為になったとしても、排泄しなければならない。嗜好性が減少して、他者といっしょに楽しむっていう行為でなくなったとしても、排泄を切り離せない。

排泄。動物も排泄している。動物も食べている。だから人間の根幹って表現はおかしいと思える。なのに「食と排泄」は頭のなかで消化されず、どこにも排泄されずに居座っている。

15:00から歯科健診。状態はよいらしい。予後の経過も問題なし。19:00からF先生とミーティング。自費診療のシステム再構築。F先生が作成されたExcelシートをふたりで見ながら利益率を分析。

別件で少しはやめに伺ったので、18:00ごろからはじめて、合間、診療や休憩をはさんで、21:45ごろ終了。濃密な打ち合わせができた。F先生が「数字」を作成してご用意してくださったおかげで論点が明確だったからできた。私は交通整理しただけ。数字が「何を」を示してくれているから、あとは「判断」と「決定」であり、二つができたら、「指示」と「実行」にうつせる。

痛感する。経営者は数字を理解していなければならない。「数字」を他人にまかせない。まかせてしまうと理解できない。目標を達成するために必要な「数字」を自分で算出する。「自分は何の数字を知らなければならないのか」を自覚しなければ算出できない。

フリーランスになったとき、価格に悩んだ。いちばんはじめに悩み、もっとも悩んだ。いまでも悩んでいる。

お給料をいただいていたとき、「価格」ははじめからあった。お客さんから価格を交渉されたら、判断と責任を上司へ相談できた。だから、自分で判断しなければならない事象は思いのほか少ない。責任は限られている。それでよいといまでも理解している。

価格を自分で決める。すごく難しい。これほど難しいなんて。自分の仕事の内容を精査して、工数と経費を計算する。利益率。それでも「価格」に自信をもてなかったり、仕事がうまくまとまらなかったら、「価格」のせいかなって。不安がいつもつきまとう。

フリーランスの経験から学んだのは、「判断」と「決定」と「価格」の三つ。三つの精度と確度を向上させることが事業主の任務だと思う。

正法眼蔵随聞記 四 三 世人を見るに果報もなく

正法眼蔵随聞記 ちくま学芸文庫 P.239

相手方からよいことをしてもらったと思われ、喜ばれようと思ってやるのは、悪いことするよりもましだけど、「自身」のことがあってやっているから、ほんとうの「よい」ことじゃない。

あの人がいないと現場がまわらない。このフレーズには二つの意味があって、「優秀な人」と「独善の人」と解釈している。前者の場合、抜けた穴は大きい。後者の場合、自分の価値を確認したいために、「自分だけにしか理解できないような環境」を現場に構築する。こちらも抜けた穴は大きいかもしれないが、意外とダメージは少ない(まぁ、最近はセキュリティで”コワイ”事例が散見されますが)。

何度も書いているけど、いまフリーランスを廃業しても誰も困らない。代わりの人がいくらでも見つかる。それぐらい私の能力は、他者に置き換えられる。そんなもの。

そして、もうひとつ。あの人がいなくなって現場がまわっているんだけどなんとなく落ち着かない。イメージすると、誰かが見てようが見てなかろうが、落ちているゴミを拾い、あたりを掃除し、誰でも手にとれるように資料を整理してあるとか、そういう「透明」に近いことを淡々と安定して毎日こなせる人。

弱点を取り除けば構造が崩れ落ちる。