原宿駅付近でキョロキョロしていたら、歩道橋の階段に座っていた女の子から声をかけられた。ちょっと風変わりな格好をした女の子。
「どこですか?」
「あっ、表参道なんですけど」
「こっちっスよ」
って指さしながら教えてくれた。よっぽどキョロキョロしてて、観光客か地方からきた人全開のオーラを放ってたんやなって気づいた。
旅の恥はかき捨てたくないんだけどさ。下品な言葉だよ。
表参道を歩く。行列を見かける。平日の午前中ですぜ。みんなパワーがあるな。先頭が気になる。数十メートル歩いてみる。カフェらしい。他の行列も食べ物のお店から発生してそう。食の量は増えても質は常に飢えている。だから真の豊かさからはほど遠いかもしれない。質への欲望がデパ地下となって形に現れたのかしら。
街中を歩けば匂いは常につきまとってくる。金木犀の匂いが甘く感じられても鼻を引っかき回さない。でも、金木犀が香水になればきっとぼくの鼻の穴をゴリゴリ引っかき回すはずさ。
そこかしこで人工物の匂いが立ちこめる。パン、ケーキ、ラーメン、出汁、Calvin Klein…..。スキかキライかなんて表裏一体なんだし、どっちにしてもぼくの鼻をヒクヒクさせる。
自然はヒクヒクさせるよりも嗅覚の衰えを気づかせてくれる。明治神宮を歩いてそう感じた。もう少し嗅覚が鋭ければもっとかぎ分けられるんだろうなぁ。
嗅覚と聴覚は見えない物を頭の中で描いてくれる絵の具なんだ。
はじめからそこにいた「存在」は静かに穏やかに佇んでいる。決して人をかき回さない。
人は引っかき回されれば、3倍返しに他人を引っかき回す。引っかき回されやすいヤツほど他人を振り回すんだよ。
人が作った匂いは人の鼻を引っかき回す。