万禍

2011.12.10 晴れ時々曇

12/10(土)は皆既月食。赤い月。私の中の赤は椎名林檎、ということで”ここでキスして。”でスタート。”て。”の。ですよ、。。

使っていたテフロン加工の24cmのフライパンが経年劣化したので無水調理できるフライパンを買った。“Vita Craft DENVER フライパン 8935” Vita Craft (ビタクラフト)、ウルトラが !!!!!!! らしいが、まずはDENVERで。

さっそく野菜を炒めたらぽかんと口を開けてしまい、焼きそばを作ったら、およそ料理の超初心者が道具を気にしはじめたとたん調子乗って無水調理のこの手のフライパンを買ってしまい間違いなく焦がすであろう儀式を体験。

翌朝、目玉焼きにびっくり。火加減が難しい。コツをつかめるまで時間がかかりそう。蓋をして蒸気で料理する感覚はつかめそう、蒸し焼きスゴ。

となりにおいてあるT-falの28cmのフライパンがとんでもなく楽ちんなんだと認識して、テフロン加工って技術ですね、って感嘆して、でもね、DENVERでつくった野菜炒めを味わったらT-falの28cmが急に色褪せてしまって、現金な我にあきれかえり、あぁ、そうですよ、私はいつも知ったかですよ、と自暴自棄。

T-falの28cmが引退したら次はウルトラか別のメーカーを物色しよう。14cmのミルクパンがもう引退したいとしきりにおっしゃっているので10年は使えるものを探そう。銀色万歳。

夜、家のベランダで皆既月食を見る。TwitterやFacebookに状況を少し書き込んだ。部分月食がはじまり23:00すぎから皆既月食がはじまった。部分月食で切り落とされた爪のように細くなった月は、皆既月食では円にもどって赤く染まる。赤いフィルタがかかったような感じ。

雲がなく星がくっきり見える。月の近くにはオリオン座。35歳すぎて天体に興味を持ち始めた。恥ずかしい話、星座を知らない。天体の運動も理解していない。それでも毛布にくるまりガタガタ震えながら皆既月食を見られてよかった。

皆既月食を見ながらiPadでTLを検索、Ustを視聴。ひとりでじっくり眺める月。TLに流れるツイートは同じ月を眺める地平の人を視覚で証明して脳内で生成する。脳が堕落する。TwitterやUstがある世界。

TwitterやFacebookは「動」と「フロー」、Blogは「静」と「ストック」を表現する。YouTubeやUstなどの動画が加わる。「動」と「静」のテキストが紡ぐ物語に人は一喜一憂する。動画はそれらの数倍は強いインパクトをもたらす。

反面、「HP」とよばれるものにひかれることはなくなってくる。「HPは宣伝だ」の先入観が思考を制御する。SNSも宣伝である。でもSNSが「物語」になったとたん、先入観はゆるみ、受け入れられる。SNSを駆使して組織の運営を「物語」として表現できる人を外注するか内製するか判断に迫られるときがやってくると思う。

正法眼蔵随聞記 六 二十 古人云く知因識果の知事に属して

正法眼蔵随聞記 ちくま学芸文庫 P.390

みのりの多い田んぼを持っているよりもわずかな芸でも身につけている方がよい、人に恩を施すには相手の恩返しを期待してはいけない、口を鼻と同じようにして沈黙を守れば万禍はやってこない、堅固な行いの人はしぜんと重んぜられる、学才が高い人はやがて人に追いこされる。

昔から言い伝えられている古則公案である。つまり正法眼蔵随聞記よりさらに古い時代から言い伝えられている。

だけどいっそう深い意味を見落とさぬようよくよく読みこまない。書かれていることにうなずいて自分の正しさを補強するだけである。そして、他人にさもありなんと語って悦に入る。

「昔の人はこんなふうに言っていたよ」と語る行為自体がすでに鼻と同じように沈黙を守っていないのに。人は沈黙とはよほど相性がわるい。

そうかと思えば、押し黙って深く悩んでいる己の姿を目撃して姿を変えた自分に酔う境地に足を踏み入れてしまいかねない。

自分とはほんとうにこわい。心底おそろしい。