琵琶湖
diary

時間を捧げる

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目が覚めて外を確かめる。暗がりのなかに白。雪。積もっている。足跡はまだ少ない。雪見大福みたいな道路。舞う粉雪。時折、真横に吹く。吹雪く。

07:00すぎ。灰色の空。薄暗い。駅へ向かう人々。前屈み。ゆっくり歩を進める。ノロノロの車。空が霞んでいる。いま湖岸はふだん撮れない景色だろう。がまん。一仕事。

通勤時間帯。ノーマルタイヤで走る車。いま出かけて、万が一、なにかの巻き添えに遭遇したくない。さらに強い風。ベランダに置いてあるGIOSのカバーがバタバタと音を立てる。合間に窓を見る。降っている。

なんとしても午前中に湖岸へ行きたい。焦り。足跡のない湖岸を撮影したい。カメラは防塵防滴に対応していない。撮影できなくもないが無理は禁物。長靴やスキーウェアのような一式を持っていない。

09:00すぎ。雪風、小休止。準備。カメラをセット。長靴代わりのDr.Martensとデニム。着古したボロのジャケット。おとついのこいつはきっとご機嫌だったはず。耳まですっぽり被さる帽子。内側に毛のついた輪っか状の首回りを暖める小物を頭からかぶる。

車が怯えたように腰が引けて走行している。歩道にいるのにこわい。

湖岸に到着。足跡がない。まず数枚。構図を思案。まさかの展開。小休止はどこへやら。山から湖岸へ風が吹き抜ける。まともにあたる風。地面から雪をすくいあげる。雪煙。どうしても撮りたかった映像を急ぐ。一発撮り。

強烈な比叡下ろし。カメラを鞄へ。iPhone で撮影。かき氷のような雪が上着と鞄にすいつく。体よりも指が痛い。経験と想像力を欠いた。今度のマストアイテムはカイロ。

下半身の後ろ側すべてが冷たくなってきたので帰ろうとしたら、男性が三脚にカメラを固定して肩に担いでやってきた。スキーウェア風と長靴。完璧な装い。帰りたい。でも男性の撮影を見たい。なんとなく感じる雰囲気。帰りたい。撮影ポイントを見たい。焦れったい。冷たい。

物腰や所作。やっぱりな。すごい。一つ一つの動作がゆっくり。入念なセッティング。三脚を固定して構図を決めた。でも撮影しない。「その時」を待っていらっしゃるんだ、たぶん。ファインダをのぞいていらっしゃる。顔をあげて前方へ目をやる。またファインダへ。それのくり返し。

一枚を丁寧に撮る。ハイアマチュアかプロの方だろうなあ。とてもよいものを拝見できた。

さあ帰るぞ。踵を返す。和犬が走ってきた、うぉ!! ビックリ。
引っ張られてきた女性が「おはようございます」とご挨拶してくださった。女性も長靴にスキーウェア風。完璧な装い。和犬は雪と遊びたくてたまらないらしい。

「よく写真撮られてますよね」

(心の中で「ハッ? エッ!!」)

琵琶湖を見ている私は、誰かの視線に入ってる。あたりまえのこと。それでも驚く。一言二言、会話して、和犬が「早う、早う」とばかり女性を引っ張っていった。

今までなら撮影したいと感じても来なかったときがあった。

いまは違う。

24時間。仕事を除けば、「誰かのために」という時間はほとんど知らなかった。

いまは違う。

無二へ「時間」を捧げる。

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