琵琶湖
diary

名もなき名前のわがままな夢

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基礎を知らない写真は、生地だけのあんパンか。肝心要のあんこが、はいっていない。生地がうまいなら、まだすくわれよう。いかんせん生地もマズイ。始末におえない。湖岸の定点観測撮影で感じること。

デジタルカメラでの撮影は、じゃんじゃん撮れる。下手な鉄砲も数打ちゃ当たる(この諺もいずれ使えなくなるかも)。一発も当たっていない素人の遊び。いつか当たって、とこっそり期待しつつ、シャッターをきる。わからないコトは、Google先生にご教授賜る。

撮影の基礎技術を勉強しなかったせいで、的に当たるまえに、壁にあたれば、右往左往するハメにおちいる。基礎は地図、はたまたタンス。迷えば、行き先を調べるべく、地図をひろげる。もしくは、ひきだしを開ける。技術と知識が、つまっている。タンスぜんたいが知識の体系だとしたら、ひきだしの数はそろわず、歯脱け。開けたくても、ひきだしがない。的に当てたいなら、「ここへ行け」といわれて、わたしの地図にルートは、書かれていない。

基礎はつまらない。さぼる。あとあと困る。どうしてつまらない? 「わたし」を表現できないから。だれが撮っても、「おなじ」を撮る。その反復。反復に「わたし」はいらない。「写し撮る」練習あるのみ。表現は、二の次、三の次。「わたし」を捨てる。基礎学習の要諦。のこり短い時間を基礎に割こうか、まよう時間もおしい。

時間。時間は宝物。『七〇歳の日記』(メイ・サートン みすず書房)を読みはじめて、時間へもっと向き合いたくなった。ゆっくり読む。気に入った文章は、ノートに書き写す。メイ・サートンが日記のなかで引用している小説『ソンジュ氏』の一節を孫引きしよう。

ソンジュ氏によれば、作家が日記を書くときは大きな困難があるという。それは、日記は他人に読ませるために書くのではないことを忘れること、というよりむしろ、自分のために書くということを忘れないことであり、というよりむしろ、自分が誰か別の人間になったときのために書くのではないということを忘れること、というよりむしろ、それを書くとき自分は誰か別の人間になっていることを忘れないことであり、いやそれよりむしろ、日記は直接自分のためだけに書くべきだということを忘れないこと、つまりそれは、存在しない誰かのためということである ー なぜなら、書きはじめたとたん、その人間は誰か別の人間になってしまうからだ。P.34

なんという文…。翻訳者のご苦労がすこしばかり伺えそうな言い回し。なんど読みかえしても意味を理解できず、最後の一文だけ、「そう、そのとおり」と膝を打つ。それで了とした。書きはじめたら別人だ。ほんとにそう。

自分の気持ちなのに、別人の気持ち。「ほんとう」は、いったいどこ? 日々はつながっているようで、実はつながっていない。その点、写真と似ている。「瞬間」を記録している。つづけて彼女は書く。

つまりは気分は変わりやすいということ。けれども日記を書く人間にとっては、人生は流転が常であり、気分も変わるものだということを知ったうえで、その時どきの自分の気分を可能なかぎり正確に記録するのが仕事なのだ。P.34

正確な記録は、気分だけにとどまらない。彼女は、固有名詞をつかう。花や鳥、人物の名前が、正確に記録されている。固有名詞は、まるで色鉛筆のよう。言葉の線でふちどられた白黒の日常。固有名詞の色がぬられる。描かれれた日常のカタチ。

歳をとって、自分の弱さを素直に認められるようになった、と彼女は書く。かつて、同業者へ抱いていた「私はひどい負け犬」という古傷。成功しているもの書きと会うのを避けてきた。古傷がうずくから。

自分の弱さ、日々おとずれる陰鬱した気分、そんな彼女を八ミリで撮影する彼女がいたかのように、日記は書かれている。

彼女には、とても親しい友人や大切な人がいる。その人たちとの会話は、おだやかで、心を落ちつかせて、ゆたかな一日をもたらす。だからといって、抱えた孤独は消えない。幸福と孤独は、両立する。

孤独とのつきあいかた。孤独にくらいイメージをもっていない。教わるものではないにせよ、先人が書き残してくれた記録から学べる。こののち、『82歳の日記』を執筆した彼女の最期をしらない。どういう最期をむかえたのだろう。

自分の最期を想像してみる。できそうで、できないが、想像できることそのものが贅沢です。ましてや死んでからのコト、だれかにお願い、愚にもつかないわがままだと承知して、散骨はくっきりみる夢。

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