某ドキュメンタリー番組にならないために

NBP: アサヒ飲料:「若武者」誕生秘話を動画で公開 商品の特徴や“味感”伝え、購買の動機づけに

アサヒ飲料は4月6日、緑茶飲料の新ブランド「アサヒ緑茶 若武者」を発売した。消費者の意識の変化を分析した結果、商品のファクト(商品の持つ事実、商品特徴)を効果的に訴求することが重要と判断。そのひとつとして、開発の舞台裏をドキュメンタリー形式にまとめたネットムービー「若武者誕生物語」の配信を開始した。商品の特徴や“味感”を伝えることで、ブランドの好感度を高める上で効果があったと言う。

大手企業が、心理マーケティングを活用しはじめた事例のひとついえますね。今までは、CMを中心としたマスマーケティングが主流だったわけですが、それが「商品の認知」になっても、「商品の購買」にまで結びつくかどうかは疑問だと、言われています。

今回のアサヒ飲料は、コアターゲットである20代後半から30代男性の消費者行動を分析した結果、接触時間が長いインターネットが告知メディア+購買メディアとして有効という答えをだしました。その答えに対応したコンテンツが、ドキュメント形式による開発ストーリーの動画配信です。

内容は若武者の開発チーム員と監修に携わった丹野氏との開発にまつわる苦労や試行錯誤をまとめたもの。実際の開発チーム員や丹野氏本人も出演している。

今回のコンテンツは、インターネットで繁盛している零細企業や個人事業主のサイトが、すでに意識・無意識問わず実践しているものです。繁盛しているサイトは、もともとオリジナル商品を扱っているケースが多く、手作りや独自製法の商品には、苦労話や素材についての興味深い話がたくさんあります。

サイトの運営者は、それらの話のうち、客観的事実と主観的事実を上手く切り分けてライティングしています。最近では、ブログをマーケティングツールとして取り入れているサイトもあります。

以前のエントリーで少しふれましたが、商品に対する情熱を外連のないよう伝えるのは、かなり手ごわいです。文章になるとなおさらです。

NHKの某ドキュメンタリー番組が、放映当初は褒め称えられたり、視聴者が心動かされていたように、"開発ストーリー"は、オブラートに包まれた箇所がなければ消費者の購買意欲を刺激する有効なコンテンツです。

大袈裟な言い方をすれば、企画から開発をへて完成するまでを丸裸にされた、嘘偽りない姿に共感をおぼえ、消費者の選択肢の一つにインプットされるのではないかと思います。

しかしながら、二番煎じという言葉のように、成功したストーリーのおいしい部分だけを模倣した「広告要素の強い開発ストーリー」や「脚色された苦労話」があるのも事実です。先の某番組では、事実と違う箇所が多く散見していると、最近では批難の的になっています。

出演者には俳優を起用せず、当事者たちに出演してもらい、真実味を出した。また、開発の舞台裏を見せることで、若武者とはどういう商品で、どういう味がするのかという“味感”のようなものがより鮮明になる。そうすれば、商品を手にとってもらいやすくなると考えた

大手企業のマーケティングの経験が私にはありませんので、どのようなものかはわかりませんが、中小零細企業の場合、「客観的事実をいかに再現し、冷静に伝えられるか」が、今回のアサヒ飲料のような事例を実践する時に必要です。そして、ライティングやWebマーケティングのコピーは、薬味として「開発ストーリー」を味付けすれば、いいのではないでしょうか。