Ambient Findabilityという言葉にとても興奮した。この言葉はインターネットの中ではなく、現場でも十分に適用できる俯瞰図だと思う。まずは「1章 遺失物取扱所」から。
すでに複雑化したネットワークの生態系の中に無線モバイル機器が新たなインターフェースとアフォーダンスを導入するにつれて、ユーザーエクスペリエンスはますます制御不能になりつつある。『アンビエント・ファインダビリティ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅』 P.8
米国の平均的な子供は、毎日4時間テレビを視ている。そこから換算すると彼(女)らは、年間20,000本のCMに遭遇し、8,000件の殺人事件を目にする。この次世代の子供たちをとりまくメディア環境は日進月歩で変化している。
本や雑誌、新聞、広告板、電話、テレビ、ビデオ、テレビゲーム、電子メール、SNS、インスタントメッセージ、ウェブサイト、ブログ、Wiki…..、さらにリスは続く。これだけのコミュニケーションツールと情報源を自由に扱えるというのはエキサイティングだが、環境が複雑になると新種のリテラシが要求される。同P.9
これらのコミュニケーションツールを使ってアクセスしてくるユーザーに対して、「あちら側」に求められるレスポンスは何か?
- モバイルの特性を活かすにはどんな設計をすべきか?
- ユーザーの利用形態が予測できない時に、どうやってより良いエクスペリエンスを実現できるか?
- ユーザーはオフィスにいるのか、それとも風呂に浸かっているのか?
アンビエント・ファイダリビリティとは一体何だろう?
■find・a・bil・i・ty
- a.位置特定可能な、あるいは進路決定可能な性質。
- b.特定の対象物の発見しやすさ、あるいは位置の識別しやすさの度合い。
- c.システムまたは環境が対応している進路決定と検索のしやすさの度合い。
■am・bi・ent
- a.周囲を取り巻く;取り囲む
- b.完全に包囲している
アンビエント・ファインダビリティでは、情報はあらゆるところに存在していて、いつでもどこでも見つけることができる。反対にいうならば、探索できない情報は淘汰されていく。そういう方向に私たちはむかっている。
ユーザーがサイトのトップページから必要な情報にたどり着けるか? これは重要な課題だが、実は多くのユーザーはトップページからサイトに入ってくるわけではないという事実を見過ごしている。同P.13
この現象は私のクライアントにもあてはまる。いまやトップページからアクセスするユーザーは少ない。つまり、「検索」を経由してやってくる。ここからが現場でも適用できると思う。「検索」は何もインターネットの専売特許ではない。「検索リテラシー」はこれから必須の能力かもしれないが、検索される方は、「検索」の背後にあるコンテクストを読み取る感度が求められるのではないだろうか。それは、「なぜそのキーワードをタイプしたのか?」であり、さらに、「有限の語彙の中からなぜ該当する単語を選択したのか?」という疑問、言い換えれば、「検索の検索を探索する」能力だと思う。
たとえば、歯科医院のサイトの場合、「インプラント 奥歯」といった単語を検索してアクセスしていくるユーザーがいる。このとき、すでに「インプラント」という単語をその人は選択している。ユーザーは既知の単語のなかからどうやって「検索(=検索の検索)」して「インプラント」とタイプしたのだろうか。しかもインプラントは「単語」であって「文脈」ではない。ユーザーは何かしらの文脈をもっている。だから、アクセス先のページを閲覧しているユーザーは、自ら心象している文脈と合致しなければ、その場から立ち去る。仮に文脈がおぼろげであったとしても、それをくっきりと描いてくれるようなサイトだと「感じること」ができなければ離れてゆく。
よって、サイト運営者は
- どのようにしてユーザーはインプラントを知ってタイプしたのか?
- インプラントに含む文脈をページでどのように作成するのか?
- 類似の文脈に誘導するための情報構造とデザイン設計をどのように構築するのか?
を常に考えなければならない。さらにそのユーザーが実際に医院へ訪問してきたのなら、「文脈」を聴き、なぜインプラントをタイプしたのかを突き止める必要があると思う。
アンビエント・ファインダビリティでは「言葉」を貪欲に追い続ける姿勢が求められるのだろう。
言葉とは、扱いにくい小さな生き物(little critter)だ。不正確で頼りなくて、文脈次第で意味が変わってしまう。誰かにとっての素晴らしい「楽園」が、他の誰かにとってはひどく虚無的な「忘却」を意味するように。類義語、反意語、同音異義語、同音反意語…..。コミュニケーションという挑戦は、テクノロジの熱烈な進歩にも左右されない、人間の条件の一部である。同P.19