バイラインとタグライン

iMacG5を発表したApple。今回のマーケティングキャンペーンでは、ある特徴があります。それが、「あのiPodを作ったメーカーです」という広告フレーズです。

Appleのシラー氏はMacCentralの取材に対して、次のように答えている。「このメッセージはいくつかのことを表現しようとしている。iMacをiPodの陰に隠そうとか、Macを軽視しようというわけでは全くない。われわれがiMacを設計して以来、Appleではいろいろなことが起こってきた。中でも最も影響力の大きい出来事と言えば、おそらくiPodだろう。製品設計という意味でも、市場のユーザー層を拡大したという意味でもそうだ。ただし、iMacは今でもiMacであり、iMac以外の何物でもない」

via: ITmediaニュース:iPod人気を活用するiMac G5、アナリストからは高評価

製品のロゴやネーミングのそばにキャッチフレーズのような言葉を目にしたことはありませんか?例えば、「南アルプス天然水:山の神様がくれた水、サントリー天然水」などです。

この一見キャッチフレーズのような言葉をバイライン、タグラインといいます。この二つは、別々にはっきりとした機能をもっています。

大雑把ですが、つぎのとおりです。

  • バイライン: わかりやすい説明であり、自分が何者かの自己紹介
  • タグライン: 使う側のベネフィットを伝えることであり、何ができるかの役割紹介

冒頭のiMacG5の話にもどりますと、Macは過去に”Switch”というマーケティングをおこなってきました。ずばり、「WindowsからMacへ乗り換えませんか?」という営業を”Switch”と表現したわけです。しかし、これは必ずしも成功したとは言えない面があります。

原因の一つに、ユーザーが”Switch”するベネフィットを感じることができなかったといえます。パソコンがこれだけ普及している現在でも、Appleというメーカーについて漠然としたイメージしかもたれていませんでした。

ところが、Macで劇的なSwitchを達成できなかっったAppleも「iPod」の発明によって、一躍脚光を浴びるようになります。Appleは、iPodによって「Macをもたない顧客」を獲得しました。それらの顧客は、WindowsPCユーザーであったりやパソコンをもたない人だったわけです。そしてiPodによって、今までMacユーザーの中でしか流通しなかった市場が、音楽市場へ水平移動しました。

今回、iMacG5を発売するにあたり、「iPod」を利用した広告戦略をとりました。

冒頭のバイラインとタグラインでいえば、

  • 「iPodを開発したメーカーです」がバイライン
  • 「コンピューターは、どこへ消えたのだろう?」がタグライン

にあたります。バイラインでAppleを強烈に印象づけて自己紹介し、タグラインでユーザーのベネフィットを紹介しています。

この場合のタグラインは、キャッチコピーの意味合いが強いですので、タグラインと言えないかもしれませんが…..。

いろいろな市場の商品をバイラインとタグラインで見直すと、新たな発見があるかもしれませんね。

『バズ・マーケティング』 マーク・ヒューズ