分化

今日はたしか敬愛する先生にとって「コトがある」日。記憶違いかもしれないけど。”分化”という。【分化】を調べてみると

  1. 均質のものが異質のものに分れること。また、その結果。
  2. 社会的事象が単純・同質なものから複雑・異質なものへ分岐発展すること。

と書いてあった。うまく分岐発展すればと切に祈念。 「わかった」と満足する人と、「わからない」ともがき続ける人。両者が棲む世界は位相が違う。優劣可否を超越。ただ”それ”だけ。

『演出家の仕事』で引用した。

今世紀最高のピアニストの一人である、ロシアのスヴァトスラフ・リヒテルの半生を追った『リヒテル・謎(エニグマ)ー甦るロシアの巨人』と題されたドキュメンタリー映像(ブリュノ・モンサンジョン監督、1998年)があります。その冒頭で、その制作者であるブリュノ・モンサンジョンは語っています。

「リヒテルは独自の世界を持ち、孤高のうちに光り輝いている。…..分析を嫌い、自己を語らず、世事や賞賛や富みに無関心。…..その心を占めているのは、障害を捧げた音楽のみ」と。[…]その映像の最後に、リヒテルのポツポツと呟くようなごく短いインタビューが収められています。

「すべてがわずらわしい。音楽じゃなくて人生が…..自分が気に入らない。終わり」

この完璧とも思える一芸術家の、「自分が気に入らない」という言葉に、芸術をどこまでも求めることの永遠性を思い、深く共鳴するのです。そして、何もかもまだ遠く届いていない今の自分を見つめ直し、演出の仕事にも到達点などないことを確認するのです。『演出家の仕事』 P.201

私は「わかった」と言う人よりも「いまだ獲得できない言葉に苦悩する人」に魅了される。これもただ”それ”だけだ。

そこに善悪是非の価値観や好悪の感情を挿入するとややこしい。いかなる理由があれど、自分を評価するのは自分自身ではない。自分は他者のなかに存在する。

分化をこころざす先生へ、必要でしたらいつでも私を使ってやってください。