なんでこんなにとられるのか

すべての老人が使っているわけじゃない。でも、「とられる」という。だとしたら、「税金と社会保険料から 毎月○○円の医療費をとっています」と自分を表現するはず。報じる方は、「2年前からわかっていたのだから、もっと懇切丁寧に」と口にする。正論。じゃぁ、2年前から報道は問題を指摘し続けてきただろうか。制度の問題点を「わかりやすく」報じているだろうか。「高い」か「負担」を飛び交わせば「わかりやすい」説明らしい。日本の総医療費は対GDP比で7〜8%。主要先進国では低いとのこと。窓口負担がないカナダとかが顔をだす。「世界」との比較が「わかりやすい」説明らしい。

参院選の大敗が引き起こした現場の混乱。軽微だろうけど報道はひっそりと報じた。もう施行が目の前にあり、システム開発も佳境に入る矢先に「負けちゃったからやばいよ、延期しよ」といえば、保険証の混乱は織り込み済み。

高齢者の医療費負担増の凍結を検討している自民、公明両党の与党プロジェクトチーム(PT)は30日、来年4月に予定していた70~74歳の窓口負担割合の1割から2割への引き上げを1年間凍結するなどの措置を正式に決めた。75歳以上の一部からの新たな保険料徴収も半年間先送りし、続く半年間も本来の保険料の1割に減額する。

今回の合意で必要となる税負担は、窓口負担増の凍結で1100億円、保険料徴収の先送りや軽減で360億円。一連の措置に伴うコンピューターのシステム改修費として100億円程度かかる見込み。与党は、これらを合わせた計1500億円程度を今年度補正予算に計上するよう政府に求める。

via: asahi.com:高齢者の医療費負担増の凍結、与党PTが正式決定 – 健康

関心は、「自分がいくら払うのか?」であって、「制度それ自体」ではない。会計事務所にお世話になっていた頃、国民健康保険が高いと苦情をおっしゃるお客さまに何度も同じ説明をした。毎年。それでも溝は埋まらなかった。私の説明不足を悔いた。他方、もう一人の私は、「制度そのものや計算方式の根拠を理解する気持ちを持ってないのだなぁ」と絶望した。

絶望のなかに希望もある。ある中年の女性が口にした。「90歳にもなるご老人が年金から天引きされたら生活できないと電話で泣きながら話す。こんな制度がほんとうによいのだろうか。もう一度、制度だけじゃなく、医療を含めた全体を国会で議論してほしい」と。

私は女性の理想に賛同。こういう女性が「現場」にいらっしゃることを感謝する。

病院がサロンと化す。不必要な治療に医療費が支払われる。国民医療費の総額は30兆円、その1/3を70歳以上の高齢者が使う。「死」の直前にかかる医療費が一番高い。どうして高いかはタブーになってしまった。報道しないし。政治家は口にしたとたん票を失う。本来、自由診療であっても「白紙委任状」を書かせて保険請求する「医療」もある。コンビニ受診。救急車タクシー。列挙すれば絶望というより、もう「死」が身近に感じられる。「死」を抜きにした医療が報じられることで、幻想の生と無限の治療を私たちは獲得した。

中年の女性が口にした言葉に便乗する。国は医療を考えてほしい。そのかわり、私は自分の死を徹底的に考える。そこで折り合いをつけよう。