原作と映画のギャップ

『ハンニバル [DVD]』 リドリー・スコット

「根本に目を向けろクラリス、答えは簡単だ。マルクス・アウレリウスの哲学書を読め。物事の本質を探れと書いてある」 —–レクター博士,羊たちの沈黙

未明にTVでハンニバルがやってた。原作と映画が見事にちがう+細部をざっくりはしょっている見本。

キャスティングの問題は目をつぶるとして、

  1. エンディングが全く違う
  2. レクター博士の「記憶の宮殿」が描けていない
  3. 「なぜ豚がでてくるのか?」の伏線がない

特に3は、これ以外にも伏線や解説がない宗教的・文化的側面部分がある。2時間ぐらいって限られた時間を、緻密に構成された原作を表現するにはかなりムリがあるのがうかがえますな。

『羊たちの沈黙 (特別編) [DVD]』 ジョナサン・デミ

しかし、羊たちの沈黙が絶賛されすぎたせいか、レッド・ドラゴンもやりずらかったんでしょう。コレも原作は、なかなかおもしろいのに。エドワード・ノートン、ハーヴェイ・カイテルなんてしびれるキャスティングをもってしてもか。

レクター3部作を読むと、レクター博士に興味をもつと同じくらい作者ハリスにくぎづけ。それぐらい知的遊戯が見え隠れする博学にひきこまれた。

冒頭の名セリフは、英語そのままでリスニングされるほうがオススメ。アンソニー・ホプキンスの絶妙な口調とアクセントが堪能できます。


Comments

“原作と映画のギャップ” への1件のコメント

  1. コルホーンの徹底
    危機感さえあれば人は、生き延びるために、自らの事情を優先するより先に現状把握と状況判断に勤しむことになるだろう。

    その際における判断力と行動力は、通常の人知の範囲を凌駕する。

    がしかし、「飢え」を知ることが恐ろしく難しい現代において、怠惰な僕はどうやって能力を磨けばいいのだろう。

    「ラビナス」という実際にあった人肉食事件を元につくられた映画において、ロバート・カーライル扮する山中で遭難し、たった一人生き延びた男コルホーンは芸術ともいえる能力を発揮する。

    この映画、主演はコルホーンと対決するガイ・ピアーズなのだが、僕にはコルホーンの人間としての美しさしか頭に残っていない。

    彼の美しさ、それは彼が生き延びた要因にも起因している。

    「欲」だ。

    倫理的に言えば、彼の欲は常軌を逸している。

    が、善悪を彼岸においてみれば、その欲を満たすために彼が徹底した行動はまさに芸術だ。

    後半になるにつれ神懸かり的な要素が加わり少し滑稽になるのだが、前半部分のコルホーンは恐ろしく、そして美しい。

    ちなみに、ハンニバル・レクターもセクシーだと思うことを否定はしないが、
    僕には決して人肉を楽しむ趣味は、まだない。