『お金とモノから解放されるイギリスの知恵 (新潮文庫)』 井形 慶子
近くの書店で背表紙にピピッと反応してレジへ向かった本。著者は、19歳の時に英国に訪れて以来、40回を超える渡英歴をもつ。28歳で恋愛・結婚をテーマにした月刊情報誌「ミスター・パートナー」を創刊。お金があれば幸せなのかって疑問から、「質素でも上質な暮らしができるんじゃない」って答えを導いていく。一言でいうと、「イギリスっていいよぉ~」ってな結論。
初めてイギリスに訪れた時、2週間の新婚旅行中というカップルにキャンプ場で出会う。二人は、炊事場で食事を交代で作り、昼間は散歩や読書で過ごす日々。決して豪華といえない新婚旅行を目の当たりにした筆者は首をかしげ、ある日尋ねてみた。
「あなた方はお金を貯めているんですか?」
新妻の回答に、自分の質問が見当違いであることにほどなく気づく。そして、イギリスに魅せられる。
「時間を気にせず愛する人と自然の中で一日中過ごすこんな体験、一生に一度だけだわ。私たちの旅は本当に贅沢よね」
- はじめに お金があれば幸せになれるのか
- 1章 なぜイギリス人は倹約を楽しめるのか
- 2章 家は持った時が始まり
- 3章 質素でも満足できる食事の風景
- 4章 美と健康に金はいらない
- 5章 贅沢しないイギリス流余暇の過ごし方
- 6章 シンプルな生活にあきない秘密
- 7章 教育を学校だけに任せない国
- おわりに 質素で上質な生き方のすすめ
イギリス人1人当たりの現金預金残高は165万円に対し、日本人は約4倍の646万円。一般のイギリス人の年収は、大卒の初任給で1万2,500ポンド(約160万円)。大手企業の重役や政府の要人でも5万ポンド(約800万円)といわれ、ECの中でも最低ランク。
ワーキングカップルが常態化しているイギリスで高額の貯金をつくりだすことは難しい。とはいえ、イギリス人は老後に対する備えの意識が低い。なぜなら、政府の社会福祉政策が充実しているからだという。老人ホームも、銀行に貯金があると有料だが、貯金がないと無料で優先的に入居できる。
一方、日本というと「高齢化問題」「老人問題」に取り組みだしたのは、ごく最近。おまけに老人問題が各家庭の問題にすりかえられ、個人の奮闘に期待される事態になっている。
国が面倒を見るイギリスと個人が面倒をみる日本。生活ができればよしと考える国民性のイギリス人と、どこまでいっても充足感がなく、年を重ねるごとに新たな心配がわき起こる日本人。
以下、ファッション・家・食事・健康・美容・レジャーなど、全部で36項目のトピックスを7章にわたってとりあげ、イギリス人の暮らしを紹介。例えば、
- 古道具屋とアンティークショップが愛される理由
- 世界でたった一つの自分の家
- 歯を失う日本人、虫歯の少ないイギリス人
- パブは酒場であり人の集まるコミュニティ
- イギリスの夫婦はなぜ愛情表現にこだわるのか
えーっと、「イギリス人のライフスタイル」を知りたい人には、参考になると思います。エッセイとして読むのがオススメです。筆者が意図したかどうかはワカランけど、「日英文化比較論」的論考として読んじゃ、読了しないかも(笑)。でないと、Amazonのレビューのようになります、ハイ。例え、筆者が「イギリスは○○だからステキ~」のあとに、必ず、「日本は○○だからブ~」って書いてあっても、エッセイとして読めば、微笑ましくなります。
イギリスのメリットばかり書いてあってメリットが皆無であっても、日本がこき下ろされて、社会構造の問題という一言でほぼ片づけられていて、提言が皆無であっても、エッセイとして読めば、「さすが40回も渡英していたら、イギリスのことよく知っていらっしゃるなぁ(棒読み)」と感嘆符がつきます。
エッ、私の書評や感想はって?私は、いまのところ、「お金とモノから解放される日本の江戸と明治の知恵」のため、それぞれの時代文化を散策中です。
またひとつ心を広くもてるような気がしたということで、お粗末でした…..orz