[Review]: 「複雑ネットワーク」とは何か―複雑な関係を読み解く新しいアプローチ

「複雑ネットワーク」とは何か (ブルーバックス)

「ネットワーク」と聞いたとき何をイメージするだろうか。現象や概念を説明する意味として使われるも、「ネットワーク」そのものを説明する、もしくは理解する機会は案外少ないのかもしれない。たとえば、「世間はせまいですね」という言葉もネットワークの表象であり、それを証明した実験もある。

ネットは網だ。野球のバックネット、サッカーのゴールネット、テニスのネット、セイフティーネットのように使われる。ワークは「仕事」だけでなく「作品」、「できたもの」という意味もある。似た意味なので語源は同じだろう。ネットワーク=網作品=網、ということだ。蜘蛛の巣や碁盤の目のようにきれいな網から、こんがらがった網までいろいろある。これがネットワークの元々の意味である。では現実のネットワークはどのような網があるのだろうか。

『「複雑ネットワーク」とは何か (ブルーバックス)』 増田 直紀, 今野 紀雄 P.7

It’s a small world —–1960年代の後半、アメリカの心理学者スタンレー・ミルグラムは「スモールワールド(小さい世界)」とよばれる実験を実施した。簡単に説明すると、ボストンに住むX氏ヘ向けて、ボストン市内やアメリカ中部から手紙をリレーして届けるという実験である。手紙を渡していい相手はファースト・ネームで呼び合えるぐらいの関係に限定されている。どれぐらいでX氏に到達したか?

スタートした手紙は、平均6回くらいのリレーでX氏まで到達した。ネットワークの平均距離が6くらいということで、「6字の隔たり」という言葉が生まれた。P.61

6次の隔たりの実験にはいくつかの問題点があり、それを改良して現代版「6次の隔たり」を実験したのがダンカン・ワッツ。若干30代前半にしてコロンビア大学で教鞭をとっていたワッツは、その実験によってスモールワールド現象を検証しミルグラムの実験結果を支持した。その内容は、『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』に翻訳されている。

このように人と人とのつながりをネットワーク科学でとらえると、そこにはハブの役割をはたす人やベキ則に従っているモデルがうかがえる。

また、伝染病やニューロン、携帯電話、ビジネス(ネットワークビジネス)といったものも、複雑ネットワークによってモデル化して考察するできる。最近では、mixiやGREEといったSNSはまさにスモールワールドであり、SNSのなかで旧友や思わぬ人と出会ったりする。

本書は「複雑ネットワーク」の基礎と最新情報をときほぐして紹介することを目的としている。だから「ネットワーク理論って何?」って首をかしげる私にはありがたかったし、より理解を深めようと次の書籍へと導いてくれる1冊となった。