『Yの真実-危うい男たちの進化論』 スティーヴ ジョーンズ, 岸本 紀子, 福岡 伸一
「講義内容とあなたの知識を駆使して、卵子と精子について自由に述べなさい」
B4一枚。高校2年、保健体育3学期末テストの問題。100点満点中200点をとって同学年の男女生徒に答案をさらされた。
表題:「スター誕生」を記憶と参考資料をもとに一部を改編し再現してみた。ご興味ある方はどうぞ。
「スター誕生」
世界でたった一人の姫に出会うために、僕は旅にでた。長い長い旅だ。その距離約30センチ。人間の距離に置き換えると、600キロメートルにもおよぶ壮大な旅だ。
僕には仲間がいる。仲間は、一回で欧州の女性全員に人間の子孫を残せるほどの数がうまれるんだ。一生では約2兆の仲間だ。
でも長い旅で残るのはたったの一つだ。それは誰だかわからない。この物語のあとに譲るとしよう。
なぜ一つなのかって?
それは、姫が待つ場所へたどりつくには、「女性」が用意した数々の困難をのりこないといけないからだ。事実、つらいことだが、旅に出発できない仲間もいる。たとえ出発できても僕たちは、基本的にまっすぐにしか進めないんだ。だから進んだ先に「壁」があるとジ・エンドだ。ちなみに、姫が待つ場所までたどりつけるのは、一回の旅で200〜300の仲間だ。厳しいだろ?
じゃ、案内しよう。僕たちは、出発すると元来の性質によって数分もしないうちにゼリー状に固まるんだ。タンパク質ってやつのせいだ。そして1時間(人間時間)もすれば元の形(液体)にもどるんだけど、その時点でほとんどの仲間が下界にとびだしてしまうんだ。
ここで残る仲間は数百万かな!?でもね、さらに前へ進もうとすると、姫の親衛隊が襲いかかってくる。
誰だ!
「白血球」ってやつだ。手強い。かなり手強い。姫に出会う資格がないと言われて、次々と仲間が殺される。クソッ!
さらに、行く道は険しい。所々が急に狭くなっていたり、迷路になっている。デキの悪い仲間を寄せつけないためだ。余談だけど、生まれた仲間のうち3分の1は、何かの異常がある。頭がでかすぎたり、尻尾がうまく振れない。しかも僕たちの進化を司ってきたDNAってすごいやつが、何度もシャッフルされる。まるでポーカーゲームのようだ。カードが新しく組み合わされる場合もあれば、悪いカードを引く場合もある。でも悪いカードを引いた組み合わせに「進化」が隠されているかもしれないんだ。神秘だと思わないかい?
話がそれた。
「女性」が用意した「壁」に捕らわれずに進めたしよう。さらに奥へ行くと、道は二つにわかれる。どっちだ。運命の選択だ。姫が待ってくれる時間も限られている。はやく決断しなければならない。
僕たちは1日(人間時間)程度しか生き残られないんだ。だから限られた時間で、僕たちはもがき苦しみながら、姫を探さなければならない。出発して、ちょうど2時間もたとうか。僕たちの衣服は洪水によって脱がされていた。それでも泳ぎ続けた。
すると、姫の声が聞こえてくる。その声を頼りにさらに進む。フト、周囲を見回すと、声を聞き取れない仲間もいて、落伍していく。さようなら。
あっ、姫だ!
やっと姫が待つ場所までたどりついた。数えてみよう、100万につき一つだけだ。しかし、そこで姫を見た僕たちは、全身が凍りついた。なぜかって?だって姫が……。まるで牢獄に閉じこめられているようなんだ。
これが最後の試練だ。最も困難な試練だ。
どうすればいい?入り口が見つからない。時間は限られている。正しい入り口を選ばないと姫には会えない。みんな、次々とチャレンジしていくけどダメだ。
…..2時間後。
幸運にも女神は、僕を選んだ。姫に出会えた!最高だ!
そして生まれる、スター誕生。
追伸
実際の答案は、保健体育の「用語」を多分に含んでおりましたが、諸事情により割愛しております。またB4の表裏を使い切りましたが、こちらも割愛しています。というよりも記憶がない。